◆持ち時間は1人10分、力点は経済や安保に
「自民党は政治への信頼を傷つけた。心からおわび申し上げる」。上川陽子外相は党本部での演説会で、総裁選への決意を表明した上で陳謝した。加藤勝信元官房長官は「政治とカネの問題について、私たちは大変厳しい批判を国民から頂戴している」と述べ、信頼回復の必要性を訴えた。
裏金事件で内閣支持率が低迷して岸田文雄首相が退陣を余儀なくされた経緯から、政治資金の在り方や「裏金議員」の公認の議論は避けて通れない。にもかかわらず、持ち時間が1人10分の演説会では政治改革に力点を置いた候補は少なく、経済や安全保障の持論を展開する候補が目立った。
小林鷹之前経済安保相は「党改革を断行する。政治資金改革の徹底は当然」と話しただけ。小泉進次郎元環境相は「政治資金の透明化に加えて、自民党改革、国会改革も進める」とし、石破茂元幹事長も「国民が納得するまで全力を尽くす」と述べたが、いずれも抽象論に終始。河野太郎デジタル相は政治とカネの問題に触れなかった。
中堅議員は「政治改革はやることが前提なので争点にはならない」と強弁。裏金事件や政治資金問題への言及が少なかったことについて、別の議員は「われわれは与党なので、そればかりやってるわけにはいかない」と擁護してみせた。
◆出馬会見や政策発表では改革姿勢をアピールしたのに
各候補はこれまで出馬会見や政策発表で、政党から議員に支出されて使途の公開義務がない「政策活動費」の見直しなど、党員票や国民受けを狙って改革姿勢をアピールしてきた。
だが、自民は先の通常国会で、政策活動費の廃止を求めた野党を押しきって温存させたばかりだ。突然の変節に野党から「どうしてあのときに声を上げなかったか」との批判が相次ぐ。
◆企業・団体献金の見直しは誰も口にしない
「裏金議員」の非公認をにおわせる候補もいるが「総裁が代わったからといってちゃぶ台返しはしない」(高市早苗経済安保相)との慎重論が大勢だ。国会の政治倫理審査会での説明や不記載額の返納を求める意見はあるものの、実効性は確保されていない。
裏金事件の実態解明に向けた再調査に前向きな候補はゼロで、政治腐敗の温床と指摘される企業・団体献金の見直しは誰も口にしない。立憲民主党の代表選では候補4人全員が企業・団体献金の廃止を主張し、その差は際立っている。