大阪IR、事業撤退の権利を放棄へ 令和12年秋にも開業、ほぼ確実に(2024年9月7日『産経新聞』)

大阪府市が誘致するカジノを含む統合型リゾート施設(IR)のイメージ(大阪IR株式会社提供)

大阪府市が大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(同市此花区)に誘致を進める、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の建設を巡り、運営事業者の「大阪IR株式会社」が、事業から違約金なしで撤退できる権利を放棄する方針を固めたことが7日、分かった。府市と大阪IRが10日にも発表する。9月末にも準備工事に着手する方針で、令和12年秋に計画されているIR開業が、ほぼ確実となった。

大阪IRには、権利を放棄することで事業継続の姿勢を明確にする狙いがある。

大阪IRを巡っては、府市と事業者が締結した基本協定で、観光需要の回復が見込めないなどの問題が発生した場合に、事業者側が違約金なしで撤退できる「解除権」が付与されていた。解除権は、8年9月まで行使が可能だった。

IRの建設予定地が2025年大阪・関西万博の会場に隣接していることから、博覧会国際事務局(BIE)や日本国際博覧会協会が今夏、万博期間中の工事中断を要請。事業の継続が危ぶまれる状況となり、大阪IRが解除権を行使する可能性もあった。

その後、政府が仲介し、府市やIR事業者と、BIEの間で工事方法の変更などの調整を進めた。8月末に来日したBIEのディミトリ・ケルケンツェス事務局長が「9月末には、問題が解決することを望む」と発言するなど、事態が収拾に向け動き出していた。

大阪IRはオリックスと米MGMリゾーツ・インターナショナルがそれぞれ出資額の4割を担い、ほかに関西を中心とした主要企業22社が少数株主として参画している。初期投資額は約1兆2700億円と見積もられている。(黒川信雄)