全国的ニュースとなっている兵庫県の斎藤元彦知事(46)の「パワハラ・おねだり体質疑惑」。8月30日に行われた県議会の調査特別委員会(百条委員会)では、改めて斎藤知事の横暴ぶりを指摘する声が相次いだ。
2021年8月に初当選した当初、斎藤知事について、「知事室に籠っている」という話を聞いた。総務省から出向して、大阪府財政課長を務めていた40代の元官僚が大きな権限を有する知事になったのだから、戸惑っていたとしても無理はない。
兵庫県知事は過去4代、副知事経験者が〝継承〟してきた。21年の県知事選に、井戸敏三前知事の後継として出馬したのも金沢和夫元副知事だった。兵庫県庁に延べ15年間の勤務歴があった。
この〝慣例〟を破って斎藤知事が当選したのは、自民党県連内の分裂に加え、日本維新の会の勢力が伸びていたことが挙げられる。21年10月の衆院選で、日本維新の会は11議席から41議席に躍進した。
その維新と一部の自民党の推薦を得て当選した斎藤知事は「高級公用車の見直し」など、維新に習った「身を切る改革」を実行した。大阪を意識した県立大学・大学院の授業料無償化なども推進した。だが、同時に「専制君主」化していったともされる。
2時間半に及んだ百条委員会では、出張先で公用車から約20メートル歩かされただけで出迎えた職員を怒鳴り散らしたとされる問題や、夜中や休日など時間を問わず部下にチャットで指示を出していた問題が取り上げられた。
さらに重大な人権侵害とされるのが、斎藤知事に関する告発文書を作成した元西播磨県民局長の男性が懲戒処分を受けた後、自死した問題だ。
斎藤知事は3月27日の記者会見で、この元局長について「噓八百」「公務員失格」などと指弾し、懲戒処分をほのめかした。その直前に、元局長はパソコンを押収されたばかりだった。
24年1月1日施行の「兵庫県懲戒処分指針」では、懲戒処分の公表は「処分を行った後」となっている。人事課は「処分については申し上げられないとだけ伝えてください」との想定問答を渡していたのだが、斎藤知事は感情をむき出しにした形だ。
公明党の委員は「退職を取り消し、元局長が自分で見つけた再就職を妨害した。これは不法行為が成立するのではないか」と指摘した。元局長の人生は大いに狂わされた。
一連の騒動で、2人の自死者が出た。兵庫県政に大きな汚点を残したが、それでも斎藤知事は「県政を前に進める」と地位に留まるつもりだ。
「身を切る改革」より「腹を切る覚悟」を―。543万の兵庫県民の多くも、それを切に願っているのではないか。(政治ジャーナリスト 安積明子)