農地の保全は農政の責務
政府は10年先を見すえた農政の指針となる基本計画づくりに近く着手する。国民への食料供給を確かなものにするため、農業が抱える課題を徹底的に洗い出して計画を策定してほしい。
日本の農地面積は23年で430万ヘクタールと、ピークの1961年比で3割減った。国民が必要とする食料を供給するにはただでさえ狭い農地の、これ以上の減少を食い止めるのは農政の責務だ。
焦点になるのが小麦や大豆、飼料用トウモロコシなど輸入に依存する穀物の増産だ。稲作と比べて作業時間が少なくてすむので、少ない人手で広い農地を守ることにつながる。食料自給率が向上するというメリットもある。
田畑の集約で大規模化が進んだのはこれまでの農政の成果だ。ただ農家が減り続ける中で、それだけで農地を守るのは難しい。規模の小さい農家を含め、多様な経営を生かす政策が要る。
ウクライナ戦争を機に肥料の確保という新たな課題も浮上した。肥料の輸出大国であるロシアが当事者になったことで国際相場が高騰し、肥料の多くを輸入に頼る日本の農業が圧迫された。
気候変動や軍事紛争などの不安定要因についても議論を深め、情報発信してほしい。リスクと必要な対策について国民が認識を共有することが、食料安保の確保にとって大切な一歩になる。