元州兵、元教師…民主副大統領候補ワルツ氏〝非エリート〟色で共感狙う 米大統領選(2024年8月7日『産経新聞』)

米大統領選で民主党の指名を受けたカマラ・ハリス副大統領(59)が副大統領候補に選んだのは、中西部ミネソタ州のティム・ワルツ知事(60)だった。「元州兵」「元教師」といった庶民的な経歴が、勝敗を左右する中西部やラストベルト(さびた工業地帯)で共感を呼ぶとの期待がある。共和党ドナルド・トランプ前大統領(78)からランニングメート(伴走者)として同様のタスクを課されるJ・D・バンス上院議員(40)との対比に注目が集まりそうだ。

アメフトで高校を州チャンピオンに

中西部ネブラスカ州出身のワルツ氏は17歳で州兵に入隊。2005年の退役まで24年間を過ごし、その間に欧州派遣なども経験した。軍務のかたわらで大学を卒業して教職に就き、同僚だったグウェンさんとの結婚後に夫人の地元ミネソタ州へ移住。教師として勤務した高校でアメリカンフットボールの監督を務め、州チャンピオンに導く手腕をみせた。長年にわたり中国との学生交流事業にも携わっている。

2006年に民主党から下院選に出馬し、初当選。6期を務めた後、18年に同州知事選で勝利し、現在は2期目だ。

ハリス氏の副大統領候補選びでは、最重要州である東部ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事(51)が最有力とみられてきた。しかしハリス氏は、ワルツ氏の州兵や教員という決して「エリート」とはいえない経歴に加え、国民的スポーツであるアメフトの指導者としての顔が、特に中西部で有権者の信頼を勝ち取るのに最適だと判断したとみられる。

しのぎ削る「非エリート」同士

ユダヤ系のシャピロ氏は、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザの攻撃に抗議する学生運動反ユダヤ主義的だと批判するなど親イスラエル姿勢を鮮明にさせている。ハリス氏はこれらが接戦州でアラブ票や学生票を取り込む妨げになると考えた可能性がある。

一方、共和党の副大統領候補であるバンス氏も、地元オハイオ州を含む中西部での票の掘り起こしが期待される存在だ。白人労働者層の家庭に生まれ、海兵隊での軍務を経て苦学の末に名門エール大ロースクールを出た「非エリート」的な経歴を前面に押し出す。

ハリス氏とワルツ氏は6日のペンシルベニア州を皮切りに、7日に中西部のウィスコンシンとミシガン、9日に西部アリゾナネバダと接戦の各州を遊説。バンス氏は同じ日程でペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンを回り集会や会見を開くと発表。ハリス氏らをマークして存在感を誇示する構えだ。(ワシントン 大内清)