同性婚、東京高裁判決に関する社説・コラム(2024年11月1・2・3・4・5・14日)

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高裁が再び違憲判決 直ちに同性婚の法制化を(2024年11月14日『毎日新聞』-「社説」)
 
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同性婚を認めない現行制度を違憲とした東京高裁の判決後、記者会見する原告と代理人弁護士=東京都千代田区で2024年10月30日午後2時8分、北村和巳撮影
 同性同士という理由で、愛する相手との関係が法的に保護されないのは不合理だ。そう明確に指摘した司法判断である。
 同性婚を認めない現行の法制度は憲法に違反するとの判決を先月、東京高裁が出した。控訴審では、今年3月の札幌高裁に続く2件目の違憲判決だ。
 東京高裁判決が重視したのは、婚姻制度の意義である。「人生の伴侶と定めた相手が配偶者として法的に認められることは、安定的で充実した社会生活を送る基盤になる」と位置づけた。
 同性間でも尊重されるべきであるにもかかわらず、互いの配偶者となる制度がないため、重大な不利益を被っていると認定した。
 現行制度では、税や社会保障、相続、親権など、結婚で得られる権利が保障されない。パートナーの治療や入院の同意に関われないこともある。
 性的指向を理由にした差別的な取り扱いというほかない。法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反すると東京高裁が結論づけたのは当然である。
 国側は、婚姻制度について「男性と女性が子を産み育てながら共同生活を送るという関係を保護するもの」と主張している。
 しかし、判決は「子をもうけることは不可欠の目的ではない」と明言した。同性カップルが里親になったり、もともと子がいたりする例にも言及した。異性カップルと区別する根拠にはならないとの指摘である。
 国会に対し、差別を解消するための立法措置を求めた。
 政府は「国民各層の意見や国会の議論などを引き続き注視する」と慎重な姿勢を崩していない。
 だが、現状を問題視する裁判所の判断が積み重なっている。
 同性婚の実現を求める計6件の訴訟のうち、地裁レベルでは5件で現行制度を「違憲」「違憲状態」とする判決が出された。
 控訴審で最初の判決を出した札幌高裁は、婚姻の自由を保障する憲法24条1項は同性カップルにも適用されると踏み込んでいる。
 国は司法の警告を重く受け止めなければならない。最高裁の結論を待たず、同性カップルも婚姻制度の対象とする法整備に、直ちに着手すべきだ。

 
同性婚の議論を今こそ前へ(2024年11月5日『日本経済新聞』-「社説」)
 
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同性婚を認めない規定を憲法違反とした東京高裁判決を受け、喜ぶ原告団(30日午前、東京・霞が関
 同性婚を認めない民法などの規定は憲法違反として同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁が規定は違憲と判断した。国に法整備に向けた議論を強く促したといえる。
 社会の変化も踏まえ、今こそ前に進めるときだ。
 一連の訴訟は全国5地裁で6件起きた。一審は違憲2件、違憲状態3件で、合憲の1件も将来的な違憲の可能性を指摘した。高裁では今回を含め2件とも違憲だ。
 判決はまず、配偶者としての法的な身分関係は「安定的で充実した社会生活を送る基盤を成し、重要な法的利益として十分に尊重されるべきだ」と述べた。
 そのうえで、同性カップルは配偶者になれず、この区別による「不利益は重大」と指摘。合理的な根拠なく、性的指向によって差別的な取り扱いをするもので、法の下の平等を定めた憲法14条などに反するとした。
 判断の背後にあるのは社会の変化だ。自治体による「パートナーシップ制度」などが広がり世論調査同性婚に賛成する人が増えた。「男女間と同様の保護を与えることへの社会的受容度は相当程度高まっている」とした。
 国への賠償請求は退けた。社会の変化は最近で、最高裁の判断もまだないからだ。だからといって議論せずによい話ではない。
 現状では同性カップルはお互いの法定相続人になれず、共同で子どもの親権を持つこともできない。税制優遇措置なども認められない。主要7カ国(G7)のなかで同性カップルの法的保障がないのは日本だけだ。
 判決は、同性カップルのための法整備として、民法などを改正し婚姻を認める方法のほか、新たな制度を設ける方法を示した。男女カップルとどこまで同様の規律にするかなど具体的な制度構築は国会の裁量としつつ、「個人の尊重」「法の下の平等」にそった制度にすべきものと述べている。
 国は司法から投げられた球を受け止め、議論に踏み出すときだ。

同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ(2024年11月5日『産経新聞』-「主張」
 
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同性婚訴訟の東京高裁判決を受け、会見した原告と弁護団=10月30日、東京都千代田区(関勝行撮影)
 
 同性婚を認めない民法などの規定について東京高裁は、違憲との判断をくだした。
 男女間を前提とし、社会の根幹を成す婚姻制度を壊しかねない不当な判決だと言わざるを得ない。
 訴訟は同性カップルの当事者7人が国に計700万円の損害賠償を求めていた。全国5地裁に6件起こされた同種訴訟で、高裁判決は札幌に続き「違憲」とされた。
 最高裁の統一的判断が示されていないことなどから、国への賠償請求は退けられた。
 判決では、同性婚を認めない規定について法の下の平等を定めた憲法14条1項と、結婚や家族に関し個人の尊厳や平等に立脚した立法を求めた24条2項に違反すると断じた。
 男女間にしか結婚を認めないことは「合理的な根拠に基づかない差別的取り扱いにあたる」とまで踏み込んだ。
 だが、国側が主張してきたように婚姻制度は、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。歴史的に形成された社会の自然な考え方であり、これに根拠がないと断じる方が乱暴ではないか。
 憲法24条2項を挙げ、「違憲」とする解釈には無理がある。同条1項で婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」すると規定し、「両性」が男女を指すのは明らかだ。これを受けた2項も男女の結婚などに関するものだ。国側が言うように、憲法同性婚を想定しておらず、違憲の問題を生じる余地はない―と考えるのが妥当だ。
 判決では各種の世論調査同性婚を支持する人が増えているとしている。同性同士にも結婚に相当するような法的保護を与えることへの社会的な受容度が「相当高まっている」とも言う。それなら同性婚を想定していない憲法の改正を論議するのが筋ではないのか。
 判決では、異性間の婚姻とは別の規定を含め「複数の選択肢」があるとし、立法を求めている。
 同性愛など性的少数者への偏見や差別をなくす取り組みが必要なのはもちろんだが、そうした権利擁護と、結婚や家族のあり方の議論は分けて考えるべきだ。民法などの結婚や家族に関する規定は、伝統や慣習を立法化したものであり、国民の合意を得た慎重な議論が必要だ。

同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ(2024年11月4日『神戸新聞』-「社説」)
 
 同性婚訴訟の控訴審判決で東京高裁は、同性の婚姻を認めない民法などの規定を「違憲」と断じた。3月の札幌高裁に続く違憲判断だ。
 全国5地裁で起こされた計6件の同種訴訟のうち一、二審合わせて8例目の判決で、違憲は4件、違憲状態は3件、合憲が1件となった。いずれも賠償請求は退けたが、同性カップルの権利を保障する司法の流れは定着しつつある。国会は最高裁の統一判断を待つまでもなく、立法措置に向けた議論を始めるべきだ。
 東京高裁判決は、婚姻制度で同性同士を男女と区別するのは「不合理で、性的指向による差別的な取り扱い」と認め、法の下の平等を定めた憲法14条と、婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に立脚するとした24条2項に違反すると判断した。
 判決は、まず婚姻の意義を説く。人生の伴侶と定めた相手と法的身分関係をつくることで安定、充実した社会生活を送る基盤になるとし、同性カップルの婚姻も重要な法的利益として尊重されるべきだと強調した。生殖の能力や意思は婚姻の要件とされておらず、カップルに子が生まれないとしても、法的関係を区別する合理的根拠はないと明言した。
 「婚姻は両性の合意のみに基づき成立する」と定めた24条1項についての判断は示さなかった。だが、判決の中で「両性」の文言があるからといって同性婚を認めないのは憲法の趣旨とは解せない、と指摘している。より当事者に寄り添い、丁寧に検討を重ねた経緯が読み取れる。
 特筆すべきは、同性婚を可能にする制度の具体的な在り方に言及した点だ。民法と戸籍法を改正して同性婚を認めるか、婚姻とは別の制度を新設するか、複数の方法を想定した上で、男女が婚姻によって得られる権利と異なれば違憲の問題が生じると警告した。男女と同じ婚姻制度の利用を重視する原告側の主張に沿って、立法の道筋を示したと言える。
 踏み込んだ判断の背景には、社会の変化への認識がある。各種調査で同性婚を認める人が反対する人を上回り、パートナーシップ制度を導入する自治体は440を超えた。同性婚を認める国も増えている。判決は「社会的受容度は相当高まっている」との見解を示した。
 国会が動かなければ、こうした現状と法制度とのずれは広がるばかりだ。東京高裁は具体的な制度構築を国会の裁量に委ねる一方で、「(裁量は)立法措置をとらない根拠にはならない」とくぎを刺した。
 衆院選で、自民党は公約に明記しなかったが、立憲民主党などは同性婚に前向きだ。与野党の政策協議が欠かせない新国会は、議論に踏み出す場にふさわしい。

同性婚高裁判決 議論先延ばし許されぬ(2024年11月3日『北海道新聞』-「社説」)
 
 同性婚を認めない民法などの規定について、東京高裁が違憲とする判決を言い渡した。
 同種訴訟のうち高裁判決は2件目で、3月の札幌高裁も違憲だった。二審で同じ判断が続いた意味は重い。
 地裁段階では違憲違憲状態と合憲で分かれる結果だったが、唯一合憲とした一昨年の大阪地裁判決も将来違憲となる可能性に言及していた。
 同性婚への社会の理解が進む中、司法の考え方も同じ方向で定まりつつあるとみていい。
 法的な結婚がかなわず尊厳が傷つけられ、税や相続などで差別的な扱いを受ける同性カップルの現状は放置できない。
 国会は積み上げられた司法判断を真摯(しんし)に受け止め、法制化への議論を早急に始めるべきだ。
 高裁判決はまず、同性間でも人生の伴侶と定めた相手と配偶者としての法的な関係をつくることは「重要な法的利益として尊重されるべきだ」と認めた。
 同性婚の「社会的受容度は高まっている」と述べ、本人が選べない性的指向で法的利益が受けられるか否かを区別することに合理的根拠はないとした。
 その上で、現行制度は法の下の平等を定めた憲法14条1項と、婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳と両性の平等に立脚すべきだとした憲法24条2項に反すると結論付けた。
 札幌高裁判決は、婚姻は「両性の合意」に基づくとした憲法24条1項についても、「人と人との自由な婚姻も含む」との解釈を示して現状はそれに反していると断じていた。
 東京高裁判決はその立場は取らず、国会が新たな制度をつくるとすれば個人の尊重や法の下の平等を踏まえるべきだと注文を付けた点が特徴的だ。あるべき制度の大枠を示して議論を促したと言えるだろう。
 しかし国会は依然として腰が重い。同性婚の法制化に野党の多くは賛成だが、自民党が否定的だ。これまでの国会議論は低調で、先の衆院選でも論戦は十分に深まらなかった。
 石破茂首相はかつて自著で、同性婚について「早急な法制化が必要」と強調していた。なのに首相就任後はその主張を控えているのは疑問だ。
 人権に関わる普遍的な問題である。与野党の垣根を越えて取り組むのがあるべき姿だろう。
 海外では同性婚の法制化が広がっている。先日は国連の女性差別撤廃委員会が同性婚を認めるよう政府に求めた。
 そうした指摘を受けるまでもなく、違憲の解消に主体的に動くのが立法府の役割のはずだ。

(2024年11月3日『秋田魁新報』-「北斗星」)
 
 放送終了後も話題となっているNHK連続テレビ小説「虎に翼」は法律がテーマだった。物語の根幹に据えられたのは、法の下の平等を定めた憲法14条。主人公の仲間が開く弁護士事務所の壁に、条文が大書されていたのが印象に残っている
▼女性であるが故に受ける社会的な抑圧、朝鮮半島出身者への偏見。さまざまな差別や生きづらさが劇中で描かれた。舞台は戦前から戦後にかけてだが、憲法の精神が現代社会で実現できているかを問われていると感じた
▼主な登場人物の中には同性愛者もいた。差別の目を恐れて本当の思いを隠して生きているとする性的少数者は、いまも少なくない
同性婚を認めない民法などの規定が憲法に違反するかが争われた訴訟で、東京高裁が先日、合理的な根拠に基づかず差別的な取り扱いだとして「違憲」と断じた。同種訴訟6件のうち控訴審判決は2例目。1例目の札幌高裁も「違憲」だった。対応を国会に迫る司法判断が積み上がっている
▼婚姻は相続や手術への同意、配偶者控除など権利や税制措置に関わる。同性婚の法制化に反対する人はいるが、同性間に同じ法的保護を与えても男女間の婚姻には何ら影響しないとした判決の指摘はその通りだろう
性的少数者の理解と権利を訴えて活動する本県の当事者が、衆院選の投開票前の紙面で「自分らしく生きられる選択肢を持てる世の中になってほしい」と語っていた。判決が、社会の理解が一層進むきっかけになればいい。

同性婚訴訟 理解に苦しむ高裁の違憲判決(2024年11月2日『読売新聞』-「社説」)
 
 同性カップルの結婚を認めるかどうかは、家族制度の根幹に関わる問題で、社会の幅広い議論が必要だ。憲法解釈のような法律論争によって結論を導くべきものではない。
 同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして、東京都の同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁であった。
 判決は、賠償を認めなかったものの、現行の民法などについて「性的指向により法的な差別的取り扱いをするものだ」と述べた。その上で、法の下の平等を定めた憲法14条などに反するとした。
 男女が結婚すると、配偶者としての相続権や税制上の優遇措置などの法的利益が得られる。同性カップルがこうした利益を得られないことは不当だという判断だ。
 性的指向は、本人の意思によって変えることができない。同性カップルだという理由で差別を受けることがあってはならないし、一緒に暮らすことも自由である。しかし、そうであっても今回の高裁判決には違和感を禁じ得ない。
 憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」すると定めている。この文言が男女の異性婚を指していることは明白だ。
 婚姻制度は、男女が共に生活し、子供を育てる営みを基礎として作られた。憲法制定時、同性婚の可否など全く議論されていない。従って、民法や戸籍法に規定がないのは当然のことだと言えよう。
 世界人権宣言も、婚姻は「男女」の権利だと明記している。
 ところが高裁判決は、憲法同性婚を想定していないことを認めながら、民法などに規定がないのは違憲だと結論づけた。憲法が想定しない事態が、なぜ憲法違反になるのか。理屈に合わない。
 同性婚訴訟は、全国の地裁や高裁で「合憲」「違憲状態」「違憲」と判断が分かれている。
 同性婚の問題を憲法が想定していないことをおかしいと言うのなら、同性婚を認めるよう憲法改正を主張するのが筋だろう。
 判決は、同性婚に賛成する人が大半だという近年の世論調査結果に基づいて、「社会的受容度は高まっている」と指摘している。
 同性カップルを公に認めるパートナーシップ制度の導入や、夫婦同様の休暇や手当を認める自治体や企業が増えていることは事実だ。ただ、家族制度の考え方は多様で、世代によっても異なる。
 同性婚の制度化は立法の問題である。国会などで、様々な観点から熟議することが必要だ。

同性婚、東京高裁判決 違憲是正へ、法制化急がねば(2024年11月1日『河北新報』-「社説」)
 
 憲法判断だけでなく、同性カップルの権利保障に向けて検討すべき法整備の方向性に踏み込んだ点でも、大きな意義のある判決だ。
 各種世論調査でも、同性婚に賛成する人は増えている。国会は司法の判断を重く受け止め、法制化に向けた議論を急がなくてはならない。
 同性婚を認めない民法などの規定が憲法に違反するかどうかが問われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁が規定を「違憲」と判断した。
 判決は「合理的根拠に基づかず、性的指向により法的な差別的取り扱いをしている」と指摘。法の下の平等を定めた憲法14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反すると結論付けた。
 高裁段階の違憲判決は3月の札幌高裁に続いて2例目。全国5地裁に起こされた計6件の同種訴訟では、計4地裁が「違憲」「違憲状態」と判断しており、違憲判断の流れは定着している。差別的な状況を是正するための立法措置は、まさに待ったなしだ。
 今回の判決で特に注目されるのは、同性カップルの権利を保障する制度の在り方に言及した点だ。
 判決は、同性カップル向けの制度を新設したとしても、異性婚に与える権利と異なる場合は憲法14条違反の問題が生じかねないと警告した。
 実質的に男女間の婚姻と同様の権利保障を求めたもので差別解消を迫る司法からの強いメッセージと言える。
 被告の国側は婚姻の目的について「男女が子を産み育てる関係を保護するもの」と主張したが、判決は民法の制定過程から「不可欠の目的ではないと位置付けられてきた」と退けた上で、同性婚を認めたとしても、男女間の結婚に対する法的保護には何ら影響しないと明言した。
 結婚に次の世代を産み育てるという社会的な機能があるのは確かだが、その機能が同性カップルへの権利保障によって損なわれることはあり得ない。
 かつて自民党の国会議員が同性カップルについて「生産性がない」とする文章を月刊誌に寄稿し、批判を浴びたことがあった。自然生殖の有無は、ともすると差別の口実にされやすいことも改めて思い起こしておく必要があろう。
 同性婚を巡る社会の意識は大きく変わり、この数年の世論調査では「賛成」が7割前後を占めている。今回の判決も「社会的受容度は相当程度高まっている」と指摘した。
 主要政党では、消極的な自民党を除き、立憲民主党日本維新の会、れいわ新選組共産党が賛成、国民民主党公明党も検討する方針を表明している。
 先の衆院選では、同性婚に前向きな勢力が大きく議席を増やした。法制化に向けた環境は十分に整ったと言っていい。次の国会でぜひ、議論を始めるべきだ。

同姓婚訴訟判決 立法対応を強く促した(2024年11月1日『京都新聞』-「社説」)
 
 同性婚を認めない民法などの規定を巡り、東京高裁が「合理的な根拠がないのに差別的取り扱いをしている」として違憲とする判決を出した。
 同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、法の下の平等を定めた憲法14条と、個人の尊厳と両性の平等を記した24条2項に違反すると指摘した。
 「結婚の自由をすべての人に」を掲げて全国5地裁に起こされた集団訴訟で、今年3月の札幌高裁に続く2件目の高裁判決も違憲判断となった。
 社会の多様性を積極的に認める司法判断が定着しつつある。国連の女性差別撤廃委員会も今週、日本のジェンダー平等に向けて選択的夫婦別姓の導入を勧告した。
 衆院選では、野党の大半と公明党が同姓婚や選択的夫婦別姓の導入に前向きな公約を盛り込んでいた。
 自民党過半数を割り込む中、もはや政治の不作為は許されず、立法措置に向けた議論を進める時ではないか。
 判決で注目すべきは、同性カップルについて初めて「配偶者」として言及したことだ。
 その上で、同姓婚を巡る「新たな制度の在り方」についても言及し、男女の夫婦を前提とした現行の婚姻制度と異なるものにすれば違憲になる可能性があると指摘した。
 立法に向けて具体的な制度が想定される中、原告らは「現行の婚姻制度と別扱いにすれば、それ事態が差別になる」と主張していた。判決はこれを踏まえたといえる。立法に向けた議論の枠組みとして重要な指針になろう。
 各種の世論調査では「同性婚に賛成」が7割前後に上る。京都市彦根市など、性的少数者カップルを公的認証するパートナーシップ制度を導入した自治体は450を超えている。
 石破茂首相は自民党総裁選では同性婚と選択的夫婦別姓に前向きな姿勢を見せていたが、首相就任後は慎重化した。林芳正官房長官は判決を「確定前」として最高裁判断を待つ考えを示唆した。
 「伝統的家族観」から抵抗する自民党の一部保守派への遠慮が目に余る。不安定な法的地位に置かれたまま、日常生活で不利益や差別的な待遇を被っている人たちがこれ以上放置されていいわけがない。
 経済界や国際社会の認識ともかい離している。国会は自覚を持って議論を始めるべきだ。

同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ(2024年11月1日『高知新聞』-「社説」)
 
 社会の意識の変化、国際的な流れ、さらには憲法が保障する人権の観点から見ても、当然の判決である。
 同性婚を認めない民法などの規定について、東京高裁は「違憲」との判断を下した。今年3月の札幌に続き、高裁レベルで2例目となった。
 同種の訴訟は札幌地裁を皮切りに計6件起こされ、地裁では5件が「違憲」「違憲状態」と判断された。
 今回の東京高裁は、同性間に配偶者としての法的身分関係を認める規定を設けていないことを「合理的な根拠に基づかず、性的指向により法的な差別的取り扱いをするもの」と断じた。
 その上で、法の下の平等を定めた憲法14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反するとした。
 特徴的なのは、同性婚を巡る新たな制度の在り方について言及した点だ。
 民法や戸籍法の規定を改正して立法すること以外に、婚姻とは別の制度を新設する方法などもあると踏み込んだ。
 具体的な制度の構築は国会の裁量に委ねられるとした上で、ただしそれが男女間の婚姻に与える権利と異なる場合は、憲法違反になり得るとも警告した。
 一方で、立法不作為による賠償請求については、同性婚を容認すべきだとする要請に対して、最高裁の判断が示されていないとして認めなかった。
 だがもはや、司法の婚姻平等の流れは定着しつつある。最高裁の判決を待つのではなく、国会は是正に向けて早急に動き出す必要がある。 
■    ■
 東京高裁は、社会の意識の変化を示す根拠の一つとして、パートナーシップ制度の急速な広がりにも触れている。
 現在、全国440以上の自治体が同制度を取り入れており、全人口の約85%の居住地域に達している。
 各種世論調査でも「同性婚に賛成」とする意見は7割を超えており、異を唱える声は少数派になりつつある。
 偏見や差別だけではなく、正式な家族と見なされないことで、病院での対応やアパート契約などの不動産手続き、学校関係など、さまざまな場面で生きづらさを抱えてきた同性カップルは多い。
 原告の一人は「違憲と聞けた。生きていて良かった」と喜びの声を上げた。判決が、多くの人々に大きな勇気を与えたはずだ。
■    ■
 先の衆院選では、主要野党が公約に同性婚の導入を掲げた。与党の大敗という結果を見ても、国民の意識がどこにあるのかを真剣に考える必要がある。
 世界の潮流から取り残されていることも事実だ。
 先進7カ国の中で日本だけが、異性婚と同等の権利を認める国レベルの制度を持っていない。
 同性婚導入については、国連人権理事会から何度も勧告を受けているが、真摯(しんし)に向き合う姿勢は見えない。
 国は問題を先送りにせず、判決を重く受け止めるべきである。

同性婚判決 国会は法制化論議を急げ(2024年11月1日『西日本新聞』-「社説」)
 
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 当事者の苦悩に寄り添った価値ある司法判断だ。同性カップルら原告の感極まった表情からも、踏み込んだ判決であることがうかがえる。
 同性婚を認めていない民法と戸籍法の規定が憲法違反かどうかが争われた訴訟で、東京高裁判決は規定を「違憲」と判断した。
 性的指向は生まれながらに備わる属性だ。愛する人と共に生きる権利は誰にでもある。にもかかわらず、相手が同性であれば結婚できないのは合理的でなく、性的指向による差別だと断じた。
 同種の訴訟は福岡など全国5地裁で6件起こされ、一審で5件が「違憲」または「違憲状態」とされた。
 3月の札幌高裁に続き、高裁でも続けて違憲判決が出た意味は大きい。
 同性婚の法制化を迫る大きな力となろう。政府と国会は判決の趣旨に沿って議論を急ぐべきだ。
 東京高裁の判決は、現行法が法の下の平等を定めた憲法14条1項、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反するとした。婚姻制度で同性間と男女間を区別するのは不合理であり、不利益は重大と認めた。
 同性カップルを法的に保護しても、男女間の婚姻には何ら影響しないとも述べた。同性婚制度は誰かの権利を脅かすものではない。現在は婚姻ができない人に必要な権利を保障するだけである。
 特筆すべきは、判決が同性婚の法整備について具体的に例示した点だ。
 民法と戸籍法を改正して同性婚を認めることや、同性婚について別の規定を新設する方法を挙げた。「具体的な制度構築は国会の立法裁量に委ねられる」として、国会に法制化の検討を促している。
 政府と国会の動きは鈍い。衆院選同性婚を認める公約を掲げた政党がある一方、政府は「国民の家族観とも密接に関わる」「同種訴訟の状況を注視する」と繰り返す。
 同性婚が認められない現状を人権問題と受け止め、不利益や差別を解消することに重きを置くべきだ。
 同性婚に否定的な人は一定数いるが、東京高裁は「社会的受容度はむしろ高まっている」との見方を示した。
 多様な家族観や性的少数者の権利に対する国民の理解は進んでいる。5月の共同通信社による世論調査では73%が「同性婚を認める方がよい」と答えた。
 自治体が同性カップルを公認するパートナーシップ制度も広がる。長崎県大村市のように、住民票の続柄欄を異性の事実婚と同様に記載する動きもある。
 同性婚が可能な国・地域は40に迫り、世界的な潮流と言える。2025年1月にはタイで法制化される。
 パートナーシップ制度だけでは税制や社会保険での不利益はなくならない。誰もが婚姻できるように法律を整備するのは当然のことである。

同性婚判決 国会は法制化論議を急げ(2024年11月1日『熊本日日新聞』-「社説」)
 
 当事者の苦悩に寄り添った価値ある司法判断だ。同性カップルら原告の感極まった表情からも、踏み込んだ判決であることがうかがえる。
 同性婚を認めていない民法と戸籍法の規定が憲法違反かどうかが争われた訴訟で、東京高裁判決は規定を「違憲」と判断した。
 性的指向は生まれながらに備わる属性だ。愛する人と共に生きる権利は誰にでもある。にもかかわらず、相手が同性であれば結婚できないのは合理的でなく、性的指向による差別だと断じた。
 同種の訴訟は福岡など全国5地裁で6件起こされ、一審で5件が「違憲」または「違憲状態」とされた。
 3月の札幌高裁に続き、高裁でも続けて違憲判決が出た意味は大きい。
 同性婚の法制化を迫る大きな力となろう。政府と国会は判決の趣旨に沿って議論を急ぐべきだ。
 東京高裁の判決は、現行法が法の下の平等を定めた憲法14条1項、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反するとした。婚姻制度で同性間と男女間を区別するのは不合理であり、不利益は重大と認めた。
 同性カップルを法的に保護しても、男女間の婚姻には何ら影響しないとも述べた。同性婚制度は誰かの権利を脅かすものではない。現在は婚姻ができない人に必要な権利を保障するだけである。
 特筆すべきは、判決が同性婚の法整備について具体的に例示した点だ。
 民法と戸籍法を改正して同性婚を認めることや、同性婚について別の規定を新設する方法を挙げた。「具体的な制度構築は国会の立法裁量に委ねられる」として、国会に法制化の検討を促している。
 政府と国会の動きは鈍い。衆院選同性婚を認める公約を掲げた政党がある一方、政府は「国民の家族観とも密接に関わる」「同種訴訟の状況を注視する」と繰り返す。
 同性婚が認められない現状を人権問題と受け止め、不利益や差別を解消することに重きを置くべきだ。
 同性婚に否定的な人は一定数いるが、東京高裁は「社会的受容度はむしろ高まっている」との見方を示した。
 多様な家族観や性的少数者の権利に対する国民の理解は進んでいる。5月の共同通信社による世論調査では73%が「同性婚を認める方がよい」と答えた。
 自治体が同性カップルを公認するパートナーシップ制度も広がる。長崎県大村市のように、住民票の続柄欄を異性の事実婚と同様に記載する動きもある。
 同性婚が可能な国・地域は40に迫り、世界的な潮流と言える。2025年1月にはタイで法制化される。
 パートナーシップ制度だけでは税制や社会保険での不利益はなくならない。誰もが婚姻できるように法律を整備するのは当然のことである。

同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ(2024年11月1日『沖縄タイムス』-「社説」)
 
 社会の意識の変化、国際的な流れ、さらには憲法が保障する人権の観点から見ても、当然の判決である。
 同性婚を認めない民法などの規定について、東京高裁は「違憲」との判断を下した。今年3月の札幌に続き、高裁レベルで2例目となった。
 同種の訴訟は札幌地裁を皮切りに計6件起こされ、地裁では5件が「違憲」「違憲状態」と判断された。
 今回の東京高裁は、同性間に配偶者としての法的身分関係を認める規定を設けていないことを「合理的な根拠に基づかず、性的指向により法的な差別的取り扱いをするもの」と断じた。
 その上で、法の下の平等を定めた憲法14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反するとした。
 特徴的なのは、同性婚を巡る新たな制度の在り方について言及した点だ。
 民法や戸籍法の規定を改正して立法すること以外に、婚姻とは別の制度を新設する方法などもあると踏み込んだ。
 具体的な制度の構築は国会の裁量に委ねられるとした上で、ただしそれが男女間の婚姻に与える権利と異なる場合は、憲法違反になり得るとも警告した。
 一方で、立法不作為による賠償請求については、同性婚を容認すべきだとする要請に対して、最高裁の判断が示されていないとして認めなかった。
 だがもはや、司法の婚姻平等の流れは定着しつつある。最高裁の判決を待つのではなく、国会は是正に向けて早急に動き出す必要がある。 
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 東京高裁は、社会の意識の変化を示す根拠の一つとして、パートナーシップ制度の急速な広がりにも触れている。
 現在、全国440以上の自治体が同制度を取り入れており、全人口の約85%の居住地域に達している。
 各種世論調査でも「同性婚に賛成」とする意見は7割を超えており、異を唱える声は少数派になりつつある。
 偏見や差別だけではなく、正式な家族と見なされないことで、病院での対応やアパート契約などの不動産手続き、学校関係など、さまざまな場面で生きづらさを抱えてきた同性カップルは多い。
 原告の一人は「違憲と聞けた。生きていて良かった」と喜びの声を上げた。判決が、多くの人々に大きな勇気を与えたはずだ。
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 先の衆院選では、主要野党が公約に同性婚の導入を掲げた。与党の大敗という結果を見ても、国民の意識がどこにあるのかを真剣に考える必要がある。
 世界の潮流から取り残されていることも事実だ。
 先進7カ国の中で日本だけが、異性婚と同等の権利を認める国レベルの制度を持っていない。
 同性婚導入については、国連人権理事会から何度も勧告を受けているが、真摯(しんし)に向き合う姿勢は見えない。
 国は問題を先送りにせず、判決を重く受け止めるべきである。