ワルツ氏は率直な物言いで知られるベテラン政治家だ。元教師で高校のアメリカンフットボールのコーチなども務め、地域に根差した活動を続けた親しみやすさが売り。共和党のトランプ前大統領(78)が特に強いとされる地方の労働者や生産者票を取り込み、ハリス氏の選挙戦を支える役割が期待される。
民主党副大統領候補に指名されたワルツ氏(本人の公式HPより)
◆人工妊娠中絶の権利を保障、学校給食の無償化も
1964年、中西部ネブラスカ州に生まれた。17歳で陸軍州兵に登録して24年間務め、主に大砲を扱う仕事に従事。難聴や耳鳴りに悩まされた。2001年の米中枢同時テロ後に米軍がアフガニスタンを攻撃した「不朽の自由作戦」にも関わった。
退役軍人の教育給付金制度を利用して地元のチャドロン州立大を卒業後、高校教師に。ミネソタ州に移住して高校で地理を教えながら、アメリカンフットボールのコーチを務め、チームを州大会優勝に導いた。1989~1990年に中国の高校で英語を教えた経験もある。
政治家となったのは2006年。ミネソタ州から連邦下院選に出馬して勝利し、6期務めた。2018年の同州知事選で初当選。下院時代は中道派とされたが、知事に再選された2022年の選挙で州議会の上下院とも民主党が多数派を占めて以来、人工妊娠中絶の権利を保障する州法の成立や、学校給食の無償化など、リベラル寄りで中間層重視の政策を次々と実施した。
◆全国的な知名度の低さはネックか
プライベートでは野球帽にTシャツ姿で、地元の議員は親しみやすさを込め「中西部の裏庭でバーベキューをしているような人」と評する。政敵をおやじギャグでからかうことでも知られる。
米メディアによると、ハリス氏が週末に複数の候補と面接した際、ワルツ氏とはすぐに意気投合。相性の良さに加え、ハリス氏が重視する中絶の権利擁護などの実績を知事として残したことが決め手となった。
一方で、全国的な知名度は低い。共和党関係者は、ワルツ氏を「危険なリベラル過激派」と攻撃する。2020年5月に州内で起きた黒人男性暴行死事件の抗議デモの対応で州兵の投入が遅れたことについても、「指導力の欠如を露呈した」と批判された。(ワシントン・浅井俊典)
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