小1女児暴行死 「児相任せ」ではすまない(2024年8月4日『東京新聞』-「社説」)

 愛知県犬山市で小学校1年の女児(7)が、母親の内縁の夫である男(32)に暴行され、命を落とした。児童相談所は2度にわたって「一時保護」したが、幼い命を守れなかった。関係機関の連携や一時保護の解除判断は適切だったのか、厳しく検証すべきだ。
 女児と母親は2022年に犬山市に転入し、男と同居。転入2カ月後に女児は男と入浴中におぼれて救急搬送され、あざも確認されたため、児相が一時保護した。男を女児から引き離すとの条件で保護を解除したが、1カ月足らずで再びあざが見つかり、2度目の保護。女児が「帰りたい」と話し、暴行の証言も得られなかったため再解除したが、女児はほぼ1年後の24年5月に内臓損傷で死亡。男が傷害致死、母親も保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕された。
 1度目の保護で、女児が「(男に)パンチされた」と話したことから、犬山市や児相などで構成する市要保護児童対策協議会(要対協)の対象児童になった。
 要対協は児童福祉法に基づき、市や児相のほか、警察、保育園、小学校などが連携し、情報共有などを通じてすきまない対策を講じるのが目的。だが、今回のケースについて市は「全面的に児相に委ねていた」とし、市が事務局を務める要対協としての対策を協議していなかったという。
 遺体の様子などから、女児は日常的に暴行を受けていたとみられているが、児相は、1度目の保護解除以降も母子が男と同居していたことをつかんでいなかった。要対協として関係機関が連携していれば、解除の条件が反故(ほご)にされていた事実を早期に把握できたのではないか。3度目の一時保護などの対処もあり得たはずだ。
 後を絶たない児童虐待の教訓として、躊躇(ちゅうちょ)なく職権による一時保護を行うなど、子どもの安全を最優先にする対応は浸透しつつあるが、一時保護の解除後に、幼い命が奪われる事件も少なくないのが現実だ。今回も解除判断に大きな課題が残ったが、解除後の児童の状況のフォローも含め、児相だけで担えるものではなかろう。
 昨年、津市で4歳女児が暴行死した事件で、検証委は「児相からの働きかけを待つ」市の消極姿勢を批判した。今回も要対協が機能しなかった点は厳しく問われるべきだ。「児相任せ」を改めない限り、同様の悲劇はなくなるまい。