なぜ愛子さまは「天皇」になれないのか…9割の国民が望んでも難しい「根本的な理由」(2024年7月1日『現代ビジネス』)

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 かつてここまで多くの日本国民が、同じ思いを共有したことはあっただろうか。9割が賛成しているにもかかわらず、「愛子天皇」実現の道はないに等しい。いったいなぜなのか。仮に実現するとして必要な法的な手続きを解説した前編記事『「愛子天皇」を9割の国民が熱望…そのウラで多くの人が犯している「勘違い」』に続き、真正面から考える。
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誰が反対しているのか?
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 もし仮に愛子さま天皇になられるとすれば、皇室典範の特例法を成立させるのがもっとも現実的な道筋だろう。その場合、国会での議論の進め方も、通常の法律とは異なると予想される。名古屋大学准教授の河西秀哉氏が解説する。
 「生前退位の特例法と同じく、国会では全会一致で決議したという体裁を取ろうとするでしょう。政府が事前に各会派としっかりと法案をすり合わせて、合意を得られる形になるまで詰めるはずです。
 普通の法案のように予算委員会などで激しい議論を行うのではなく、議院運営委員会や特別委員会などで少しだけ議論して、全会一致で可決すると思われます」
 このような過程を経れば、国民の多くが求める愛子天皇を実現させるのは、手続き上そう難しくない。根強い支持にもかかわらず、これまで議論が進まなかった一因は、「自民党の旧清和研(安倍派)などの保守系議員が反対しているから」と説明されることが多かった。
 だが政治外交ジャーナリストの岩田明子氏は、故・安倍晋三氏についてこう証言する。
 「安倍元首相が主張していたのはあくまでも男系皇統の維持であり、女性天皇を認めなかったわけではありません。現在の皇位継承順位は変更しないことを前提に、皇統の存続をより確かなものにすべく、将来的には男系女性天皇の可能性についても、政治が責任を持って議論するべきだと話していました」
 実際のところ自民党保守派の中でも、女性天皇に反対している議員はそこまで多くないという。
 「たしかに、旧清和研の一部には絶対に女性天皇を認めない超保守的な議員もいますが、その数はごくわずか。多くは女系天皇に反対しているだけなので、男系女子の愛子さまであれば議論がまとまる可能性は十分あります」(自民党関係者)
 そういった状況は、「賛成9割」という国民の声とも符合する。一部の「岩盤保守層」は声が大きいため、実態以上に数が多く見えるのだろう。
 国民の9割が賛成し、反対派はごく一部に限られているにもかかわらず、なぜ愛子さま天皇になれないのか。議論が進まない理由について、前出の白鳥氏は「端的に言って、誰もやる気がないからだ」と指摘する。
 「戦後に皇室典範が改正されたのは事実上、1949年に宮内府が宮内庁に変更されたときと、2017年の生前退位の際の2回だけ。将来的に皇族の数が少なくなるとわかっていても、正面から取り組めば大きな議論を呼ぶのが目に見えているだけに、よほど強い信念を抱いた政治家でない限りわざわざ火中の栗を拾おうとはしないはずです。
 しかも現状では秋篠宮さま、悠仁さまという皇位継承者がいらっしゃるので、すぐに何か問題が起こるとも考えにくい。お二人がご健康なうちは、本質的な議論は始まらないと思います」
岸田首相、起死回生の一手
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 このまま世論と政治がかけ離れた状況が続けば、政権への支持率もますます下がっていくだろう。しかし岸田政権が土壇場まで追い込まれたときこそ、議論が大きく進むかもしれない。
 「ときに大胆な奇策に打って出る岸田首相であれば、何をやるかわかりません。表向きには明言せずとも支持率回復を狙って、国民から支持を得やすい愛子天皇の議論を進める可能性もあります。
 仮に『即位されるのは愛子さま1代限りで、そのお子さま、すなわち女系天皇は認めない』と線引きすれば、自民党内の保守派も納得するのではないでしょうか」(前出の河西氏)
 愛子さま天皇に即位され、皇位継承順位の第1位は悠仁さま、その後は悠仁さまのお子さまたちが継承していく――このようなシナリオを導く皇室典範の特例法を成立させるのが、愛子天皇を実現させるもっとも現実的な方法だ。
 ただし特例法で愛子さまが即位されたとしても、問題を先送りしたに過ぎない。悠仁さまに男子が産まれなければ、男系の皇統は途絶えてしまう。
 「自民党旧宮家の男系男性を皇族の養子にし、その子どもに皇位を継がせるという案を打ち出しています。しかし自ら進んで自由な暮らしを捨てて、窮屈な皇室に入る一般人が実在するとは思えない。
 もうその場しのぎの議論はやめて、ヨーロッパ各国の王室を参考にしつつ女系や長子継承も含めて真正面から議論すべきでしょう。そうしなければ皇室への支持が揺らぎ、天皇制そのものに危機が訪れてもおかしくありません」(河西氏)
 日本という国の根幹をどうすべきか、国民ひとりひとりが考えるべき岐路に来ている。
 「週刊現代」2024年6月29日・7月6日号より
 さらに関連記事『「愛子天皇」を9割の国民が熱望…そのウラで多くの人が犯している「勘違い」』では、「愛子天皇」が実現するまでの具体的な手続きについて、解説している。