「90%が容認」世論調査も進まぬ「女性天皇」実現への道 識者が本誌に語っていた「4つの理由」と「解決策」(2024年5月9日『SmartFLASH』)

「90%が容認」世論調査も進まぬ「女性天皇」実現への道 識者が本誌に語っていた「4つの理由」と「解決策」(2024年5月9日『フラッシュ』)

5月2日、天皇皇后両陛下と愛子さまは栃木県の宮内庁御料牧場を散策された(写真・JMPA) 

 5月1日で、即位5年を迎えられた天皇皇后両陛下。その日を前に、4月27日、共同通信が実施した皇室に関する世論調査が注目を集めている。

 皇位継承の安定性について「危機感を感じる」が72%に上り、女性天皇を認めることに90%が賛同しているのだ。女性天皇に賛成の理由は「天皇の役割に男女は関係ない」がもっとも多かった。この結果に、SNSでは多くの歓迎の声が上がっている。

《多くの国民が思っているのは血統や正当性よりも天皇としてふさわしい人柄に重きを置いてほしいということでしょう 天皇は国民の象徴なので次期天皇は一部の有識者や政治家が決めるのではなく最後に決めるのは国民であるべきです》

《容認と言う言葉は適切ではない。願いと言った方がしっくりくる。そして、大多数の国民から望まれている。日本の象徴として、所作やお言葉に品格があり、国民から尊敬され敬愛される方こそが、ふさわしいと思う》

 そしてそのなかには「愛子さま」待望論も多い。

愛子さまの品のあるお振る舞いに、ご立派にご活躍される姿に胸が熱くなりますし、日赤でのご活動とご公務の両立は大変だとは思いますが、いつも明るく振る舞われるお姿には感銘を受けます》

天皇が日本の象徴であり、国民の総意となるのにふさわしい方は、天皇のお子様しかいないと思う。今上陛下に愛子さまというお子様がいるので、次の天皇女性天皇として愛子さまにしか務まらないと思います。》

 これほど多くの国民が待ち望んでいるが、それが実現する道筋は見えない――。皇室研究家の高森明勅氏は4月、「女性天皇」が必然だという4つの理由を、本誌に語っている。

「いちばん大きな理由は、日本は一夫一婦制であるということです。日本以外のおもな国で、一夫一婦制で男系男子に限定しているのは、リヒテンシュタインだけ。リヒテンシュタインは人口が4万人に届かない超・ミニ国家です。つまり、わずかな例外を除けば、一夫一婦制で男系男子に限定している国は日本だけなんです。

 イギリスも女王の時代が長く続きましたし、オランダは今の国王の前は、3代、女王が続きました。なぜかというと、代々必ず男子が生まれるとは限らず血統が続かないからです。しかもどこの国でも、女性の君主を男性の君主と同じように敬っています」(高森氏・以下同)

 憲法が求めている「皇位世襲」に応えるためには、「男系男子」というルールを変える必要がある。

皇位を継承するのは男系で、かつ男子であるという規定は、もともと明治の皇室典範で採用された新しいルールですが、その当時は側室が認められていて、側室のお子様にも皇位継承資格があるという前提があった。そして、『男系男子』という前近代になかった新しいルールを採用したわけです。

 しかし、その前提とされていた側室制度は現代ではまったくあり得ないことです。一夫一婦制で少子化という現状で『男系男子』という、きわめて不自然なルールは持続不可能です。このルールを見直せば、女性皇族方にも皇位継承資格が認められますから、女性天皇が可能になるわけです」

 第2の理由は、憲法1条に天皇の地位は「国民統合の象徴」だと書いてあるからだという。

「『国民統合の象徴』ということなら、国民の半数は言うまでもなく女性ですから、男性しか象徴になれないというルールで、はたして国民統合の象徴にふさわしいのかということになってくる。男女ともにその地位につけなければ、象徴制において十分でない、損なわれるものがあるという問題ですね」

 第3の理由は、「国民の総意」が敬愛される天皇のお立場にとって無視できないことだ。これも憲法第1条にある「この地位は主権の存する国民の総意に基づく」が根拠となる。

「現在、『国民の総意』がどこにあるかと言えば、世論がそれを示しています。世論調査では『女性天皇を認めるべきだ』という結果がコンスタントに7割から8割、ときに9割近い数字も出ています。

 各種調査で『女性天皇』が高い支持を集めているという現実を考えれば、明らかに女性天皇を排除している今のルールは国民に求められていないことになる。『国民の総意』に照らしてみれば、女性天皇は認められるべきだということになります」

 そして4つめの理由が、現代の普遍的な価値観だ。

「生物学的な性別とは区別された文化的・社会的な性差において平等に扱われなければならない『ジェンダー平等』ということが、現在の普遍的な価値観になっています。そういう現代の価値観に照らして、天皇皇后両陛下にお子様がおられても、ただ『女性だから』というだけの理由で排除されるようなルールは、やはりふさわしくない。

 皇室の存続、安定的な皇位継承、古風な言い方をすれば『皇室の弥栄(いやさか)』を願うなら、女性天皇という選択は必然だと申し上げていいと思いますね」

女性天皇」が必然だとしても、現実には議論は進んでいない。いったいなぜ議論は進まないのか。

「それは政治家の問題です。国会内にある『男系男子』への根拠のない思い込みによる固執ですね。

 彼らは『男系男子』が明治になって初めて採用されたルールであることさえ知らない。推古天皇以来、後桜町天皇まで10代・8人の女性天皇が実在したわけです。明治になって排除されただけですから、男子限定というルールはなかったということです。

 古代の大宝令、養老令は『女帝の子』に女系で『親王』の身分を認めており、そういう意味でも、男系に限定したのは明治からということがわかる。『男系男子』が、神武天皇以来の皇室の伝統だという錯覚に基づいて思考停止している。それが、政治家として、いちばん楽だからです」

 女性天皇実現のためには、皇室典範の一部を書き換えるだけでいいという。

「いまの皇室典範第1条には、《皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する》と書いてある。天皇の血を父方から受け継いだ『男系』の男子のみが天皇になることを定めているわけです。男系であっても女性であれば天皇になることを認めず、母方に天皇の血筋を持つ『女系天皇』も除外されてきました。

 明治の憲法皇室典範は、『男系男子』という縛りがありましたが、今の憲法には『世襲』としか書いてありません。『世襲』には男子、女子、男系、女系すべて含むというのが政府の見解であり、憲法学界の通説です。

 憲法という最高法規は『男系男子』に限定していないんです。憲法の下位法である皇室典範にのみ『男系男子』と書いてあるわけです。これが女性天皇を阻み、皇位継承の行く末を険しくしている。

 解決策は、皇室典範の『皇統に属する男系の男子』の『男系の男子』という部分を『皇統に属する子孫』と書き換えればいい。それだけです。これによって、女性天皇女系天皇も認められるようになる。そして『男系男子』だけ削れば、次の皇位継承者は愛子さまということになります」

 皇室典範第2条には天皇になる順番が書かれているが、その1番めが「皇長子」。これは天皇の第1皇子のことだが、男女の区別はない。そのため、第1条の『男系男子』さえ削れば、継承順序はそのままで愛子さまが皇太子となり、ゆくゆくは天皇となる。

 5月7日、額賀福志郎衆議院議長は、安定的な皇位継承の在り方をめぐり、与野党の幹部らと会談し、翌j週にも協議を始める意向を伝えた。

 はたして「愛子天皇」を望む国民の声は届くだろうか――。