「愛子天皇」を9割の国民が熱望…そのウラで多くの人が犯している「勘違い」(2024年6月30日) 6/30(日) 8:03配信

 かつてここまで多くの日本国民が、同じ思いを共有したことはあっただろうか。9割が賛成しているにもかかわらず、「愛子天皇」実現の道はないに等しい。いったいなぜなのか、真正面から考える。

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国民の9割が熱望

 「これまで女性天皇に賛成する人の割合はずっと70~80%で推移していましたが、まさか9割に達するとは……。ここ最近の愛子さま人気がいかに根強いかを示す結果とも言えるでしょう」

 こう話すのは象徴天皇制の専門家で、名古屋大学准教授の河西秀哉氏だ。  4月27日に発表された共同通信の調査で、女性天皇を認める人が9割という衝撃的な結果が明らかになった。そのうちのほとんどが、「愛子天皇」を念頭に置いて回答したのは間違いないだろう。『ゴーマニズム宣言』で知られ、『愛子天皇論』という作品がある漫画家の小林よしのり氏も、愛子天皇を支持している一人だ。

 「私はかねてから、愛子さま天皇になられるのがもっともふさわしいと主張してきました。今回の結果は、その考え方が9割の国民と共有できたことを示しているように思います。この世論の流れを見ても動こうとしない政治家は、まったくもって頼りになりません」  小林氏が「皇室の将来をしっかり考えている、数少ない国会議員の一人」と評価する立憲民主党馬淵澄夫氏もまた、現状の議論の進め方を批判する。  「私は党の『安定的な皇位継承に関する検討委員会』の事務局長として立法府の議論に参加していますが、そこで女性天皇に関する話はまったく出ていない。世論調査では9割が容認しているにもかかわらず、現状は国民の思いを無視したまま進んでいます。永田町の論理だけで議論が進む事態があってはなりません」

ずっと棚上げにされてきた

 国民から望まれている方こそ天皇になるべきではないか――この考え方は、日本国憲法と照らし合わせても矛盾はないという。前出の河西氏が解説する。

 「憲法第1条には、〈天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く〉とあります。つまり戦後日本では、天皇天皇であるのは『国民がそれが良いと感じているから』だったわけです。もし愛子さま天皇になられたら、名実ともに憲法の理念が実現するとも言えますね」

 小泉政権下で組織された「皇室典範に関する有識者会議」は2005年、「女性天皇および女系天皇を認める」という報告書を提出している。だが2006年に悠仁さまが産まれて皇位継承の道筋が見えて以来、本質的な議論は棚上げにされてきた。  静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次氏は、「しっかりと議論できるのは、この数年が最後のチャンスかもしれない」と話す。

 「最近の秋篠宮家の方々を見ていると、国民感情とズレている場面がしばしば見られます。もし悠仁さまが天皇になられても状況が変わらなければ、皇室そのものへの支持が揺らぎかねない。

 しかも愛子さまは昨年で22歳になられて、結婚も人生の選択肢の1つに浮かびつつあると言えます。ご結婚されて皇室を離れられる前に、結論を出さねばなりません」

多くの国民が「勘違い」している

 では実際にどういった手続きを踏めば、愛子さま即位への道が開かれるのだろうか。現実的な手順をシミュレーションしてみよう。  勘違いしている人も少なくないが、女性天皇を実現するために憲法改正は必要ない。

 「憲法第2条は、〈皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する〉となっていて、天皇の性別に関して規定していません。皇室典範を改正すれば十分です」(小田部氏)  皇室典範はあくまでも法律であるため、国会で過半数が賛成すれば改正は可能。憲法に比べてハードルは低い。中でも大きく変更が必要なのは、これら2つの条文だろう。

 第1条〈皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する〉

 第12条〈皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる〉

 天皇と男性のみの血縁でつながった関係を「男系」、間に1人でも女性がいる関係を「女系」という。愛子さまは父が天皇陛下である男系女子のため、第1条を改正する際は、文中の「男子」を「子女」とすればいい。

 しかしそれだけではご結婚されると皇室から離れてしまうので、結婚後も皇族の身分を保てるよう第12条も変える必要がある。これがいわゆる「女性宮家」の創設だ。

 ほかの法律と同じく国会で皇室典範の改正を決議しこれらの条文を変更すれば、女性天皇の実現は可能だが、実際に改正するとなると道のりは険しい。法政大学教授の白鳥浩氏が解説する。

 「皇室典範は国家の根幹に関わる法律であり、改正するとなれば国を二分する議論になりかねない。そう簡単に改正できるものではありません。

 仮に手を加えるとなれば、議論の流れを作るのは国会ではなく政府でしょう。世論の動向を見つつまずは有識者会議を立ち上げて、答申を受けたという体裁を整えてから、特例法を制定する形で進めるはずです」

 その先のプロセスを考えるときに参考になるのが、2017年に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」だ。上皇さま(当時は天皇陛下)の「おことば」をきっかけに生前退位に関する議論が盛り上がり、皇室典範の本則は改正されなかったものの、生前退位という「例外」を認める特例法が成立した。

 だがいきなり女性天皇に関する特例法の議論を始めてしまうと、問題が大きすぎて結論を出しにくい。白鳥氏が予想するのは、第12条と第1条それぞれに対応する形で、2段階かけて進むというシナリオだ。

 「まずは佳子さまと愛子さまが結婚後も皇室に残れるよう、女性宮家の創設に論点を絞った有識者会議が設置され、特例法を成立させるのではないでしょうか。そして愛子さまが皇室から離れないと決まった段階で、あらためて女性天皇について検討する有識者会議が立ち上がると考えられます。

 会議で結論が出るまでに約2年、立法に約1年かかるとして合計で6年。実現するとすれば、早くても2030年あたりになるでしょう」

 国民の9割が容認しているにもかかわらず、「愛子天皇」の実現は不可能に近い。悠仁さまという皇位継承者がいらっしゃるのはもちろんだが、理由はそれだけではない。後編記事『なぜ愛子さまは「天皇」になれないのか…9割の国民が望んでも難しい「根本的な理由」』にて、解説する。

 「週刊現代」2024年6月29日・7月6日号より