<7.7東京都知事選・現場から>
◆「孫の代まで汚染を残したくない」
PFASを含む泡消火剤の漏出が相次いだ横田基地は、井戸の汚染の有力な「容疑者」だ。都は約1年前から事態を把握しているが、基地への立ち入り調査を要請しないまま時間が過ぎていく。
30代のころから脂質異常症と診断されてきた。PFASとの関連が指摘される健康被害と聞いて「体質のせいだと思っていたけど、もしそれがPFASのせいだとしたら許せない」と怒りが湧いた。「孫の代まで汚染を残したくない」と、都に汚染源の調査を望む。
防衛省は昨年6月末、都の問い合わせに、2010~12年に横田基地で泡消火剤の漏出事故が3件発生したと回答した。これを受けて都と基地周辺6市町でつくる連絡協議会は国に要望書を提出したが、立ち入り調査を求めたわけではなく「国の責任における地下水への影響調査」が主な内容だった。
◆「国の動向を注視する」に「危機意識ない」と批判
沖縄県の普天間飛行場、神奈川県の厚木基地、横須賀基地の米軍3施設では2020年以降、PFAS漏出に関して地元自治体が立ち入り調査を要請し、実現している。浜田靖一防衛相=当時=は横田基地に関しても「関係自治体から具体的な要請があればアメリカ側に働きかけていきたい」と述べていた。
それなのに、都は一貫して「国の動向を注視する」との態度だ。岡部さんは「なぜ動かないか。納得できる理由を一度も聞いたことがない」と首をひねる。「明らかにする会」事務局の根木山幸夫さん(77)は「都民の命と健康を守るために汚染源を究明するべき都の役割を果たしていない。問題に対する危機意識がないのではないか」と批判した。
都知事選で議論が深まっているようにも見えない。主要候補を支援するある都議は「一部の地域だけが関心を持つ政策はなかなか前面に出しにくい」と明かした。国分寺市でPFAS問題に取り組む杉井吉彦医師(73)は憤る。「PFASによる水道水汚染が23区内で起きていたら対応は違うはずだ。これは明らかに多摩地域の軽視だ」
多摩地域のPFAS汚染 各地でPFASが高濃度で検出され、都水道局の水源井戸40カ所が取水を停止した。市民団体が住民の血中のPFAS濃度を調べた結果、取水を停止した7市内の住民の67%が米国で「健康被害の恐れがある」とされる指標を超えていた。米軍横田基地では2010~23年、泡消火剤などの漏出事故が計8回発生しており、汚染との関連が疑われている。
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