最高裁、強制不妊被害者を全面救済 国の一時金上回る賠償が確定(2024年7月3日『毎日新聞』)

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優生保護法訴訟の最高裁判決を前に入廷する原告団=東京都千代田区で2024年7月3日午後1時17分、幾島健太郎撮影
 旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、旧法の規定が憲法に違反すると認めた。その上で、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」については、旧法の被害には一律に適用しないとし、被害者を全面救済する初の統一判断を示した。
 5件全ての訴訟で国の賠償責任を認め、被害者側の勝訴とした。国は2019年に被害者に一時金320万円を支給する救済法を施行したが、これを大きく上回る被害者1人当たり1100万~1650万円(配偶者は220万円)の賠償責任が確定した。救済法の見直しを求める声が強まることは必至だ。
 上告審で審理の対象になっていたのは、札幌、仙台、東京、大阪(2件)の各高裁で出た5件の判決。
 各高裁はいずれも旧法の規定が憲法に反していたと認めたが、被害者が手術を受けたのは50~70年代ごろで、提訴まで20年以上が経過しており、仙台高裁は除斥期間を理由に被害者側の請求を棄却した。
 一方、残りの4件で、各高裁は除斥期間の適用が「著しく正義・公平の理念に反する」として国に賠償を命じていた。
 上告審で被害者側は、旧法によって「戦後最悪の人権侵害が行われた」と主張。障害者への差別や偏見が残る中、訴訟を起こすことは困難だったとし、「時の経過による国の免責は許されない」と訴えた。
 国側は、除斥期間は被害者の認識に関係なく適用されると説明。適用の制限が認められるのは極めて例外的な場合で、今回はそうした事情がないと反論していた。【巽賢司】
 

優生保護法下の強制不妊手術、国に賠償責任 最高裁が統一判断(2024年7月3日『毎日新聞』)
 
 
 旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして被害者らが国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、国の賠償責任を認めた。全国で起こされた同種訴訟で裁判所の結論が割れる中、大法廷は最大の争点だった不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」を適用せず、被害者側の勝訴とした。
 上告審で審理の対象になっていたのは、札幌、仙台、東京、大阪(2件)の各高裁で出た5件の判決。
 各高裁はいずれも旧法の規定が憲法に反していたと認めたが、被害者が手術を受けたのは50~70年代ごろで、提訴まで20年以上が経過しており、仙台高裁は除斥期間を理由に被害者側の請求を棄却した。
 一方、残りの4件で、各高裁は除斥期間の適用が「著しく正義・公平の理念に反する」とし、被害者1人当たり1100万~1650万円(配偶者は220万円)の賠償を国に命じていた。
 上告審で被害者側は、旧法によって「戦後最悪の人権侵害が行われた」と主張。障害者への差別や偏見が残る中、訴訟を起こすことは困難だったとし、「時の経過による国の免責は許されない」と訴えた。
 国側は、除斥期間は被害者の認識に関係なく適用されると説明。適用の制限が認められるのは極めて例外的な場合で、今回はそうした事情がないと反論していた。【巽賢司】
 

優生保護法、戦後13例目の法令違憲に 活性化する最高裁憲法審査(2024年7月3日『毎日新聞』)
 
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最高裁判所=東京都千代田区隼町で、本橋和夫撮影
 
 最高裁大法廷は、障害者らへの強制不妊手術を認めた旧優生保護法の規定を違憲だと指摘した。
 
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最高裁大法廷
 
 最高裁による法令違憲の判断は戦後13例目。うち8件は2000年代に入ってからで、違憲審査を活性化させている傾向がうかがえる。
 最高裁が初めて法令を違憲としたのは1973年。親や祖父母らを殺害した場合に、より重い刑罰を科していた尊属殺の規定を法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると判断した。
 70~80年代には、衆院「1票の格差」訴訟で公職選挙法の規定を2度違憲としたが、最高裁の法令違憲は極めてまれな判断だった。
 しかし、2000年代に入ると様相は一変。「婚外子国籍確認訴訟」(08年)▽「婚外子相続格差訴訟」(13年)▽「再婚禁止期間訴訟」(15年)――などで相次いで法令違憲を示した。昨年も、性別変更をするためには生殖機能をなくす手術が必要とする性同一性障害特例法の要件について、憲法に反すると認めている。
 最高裁違憲とした規定は改正を迫られるが、今回、旧優生保護法違憲とされた条項は、96年に母体保護法に改正された際に廃止されているため、見直しは必要ない。【巽賢司】