多摩地域のPFAS汚染 米軍横田基地で2010〜23年、PFASを含む泡消火剤などの漏出事故が計8回発生。12年発覚の事故では泡消火剤の原液約3000リットルが土壌に漏出したが、米軍は基地外への影響を否定している。都の地下水調査では、基地南東の約1キロ地点で、強制力のない日本の暫定指針値(PFOSとPFOAの合計値で1リットル当たり50ナノグラム)の27倍を検出。これは都内最高値。基地周辺の地下水は西から東に流れているとされ、都が19年以降に取水を停止した井戸40カ所は全て基地の東側にある。
米環境保護庁(EPA)は4月、飲用水に含まれるPFASの一種のPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)の規制値を1リットル当たり4ナノグラムとし、これをクリアしなければならないと定めた。従来は両物質の合計値1リットル当たり70ナノグラムを勧告値とし、強制力はなかった。新規制値は、在日米軍基地にはまだ適用されていないとみられる。
米軍関係者によると、基地内の飲用井戸は12カ所。基地の2021年版水質報告書では、井戸から浄化処理後でPFOSとPFOAの合計値が1リットル当たり5~29ナノグラムが検出されていた。
基地内の飲用水は井戸と水道局の水道水を併用しているが、水道水が飲用水に占める割合をほぼ100%にし、一部井戸は緊急時に備えて維持する案という。
◆水道水購入なら「米軍が積極的に除染に乗り出す必要性失う」
都水道局は19年以降、PFAS濃度が高い水源井戸40カ所で取水を止め、多くの浄水施設でPFOSとPFOAの合計値は1リットル当たり5ナノグラムを下回っている。
政府関係者は「米軍が水道水に切り替えることで新規制値をクリアできれば、米軍が積極的に地下水の除染に乗り出す必要性を失うことになる」と危惧。汚染源特定や地下水の除染が進まず、長期間にわたり汚染が放置される恐れもある。
在日米軍広報部は取材に、井戸の運用停止に触れず、「横田基地と日本政府の間で現在、EPAの新規制値に伴う水道水購入について協議していない。新規制値が海外の米軍基地、特に在日米軍基地にどう適用されるか注視している」と回答した。
市民団体「PFAS汚染を明らかにする立川市民の会」事務局の佐々木憲幸さん(68)は「汚染の原因をつくったのなら浄化作業をするべきなのに、汚れていない水を買って対処するのは本末転倒であり、許せない」と批判した。
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◆米軍、ドイツでは装置を設置し、地下水浄化に積極的
米国の飲用水PFAS規制が厳格化され、ドイツでは汚染源と特定された米軍基地で、米軍が地下水の浄化を積極的に進めている。
米軍準機関紙の星条旗新聞によると、米国で新規制値が設定された4月、ドイツ南部の米軍アンスバッハ駐屯地では、地下水からPFASを除去する浄化装置を設置する新たな計画が始まった。日本政府関係者は「米軍が自分たちの飲み水を確保するためにも、環境改善に取り組んでいる」と指摘した。
環境省によると、2012年以降、ドイツ政府が調査でPFASの汚染源として米軍5施設を特定した。