政府は、家庭や企業の電気・ガス料金を抑制する補助金を5月使用分を最後に打ち切った。電気・ガス料金ともに7月請求分から上がり、家計の負担は光熱費がかさむ夏以降、一段と増える。
食品の値上げも続いている。このまま物価が上昇し続ければ春闘の賃上げ効果は消滅しかねない。政府は深刻な打撃を受ける世帯や中小企業に的を絞った支援の枠組みを早急に構築すべきだ。
補助金打ち切りで東京、中部、北陸など電力大手10社と、東京、東邦など大手ガス4社の料金は軒並み上昇。使用料金が平均的な世帯で電気・ガス合わせて年3万円程度の負担増との試算もある。
その一方、政府は石油元売りを通じた支援であるガソリン代への補助は継続する方針だ。
厚生労働省が公表した4月の毎月勤労統計調査で、実質賃金は前年同月比25カ月連続でマイナス。物価高に賃上げが追いついていないにもかかわらず、電気・ガス料金への補助金だけを、なかば自動的に打ち切るのは、家計の実態を軽視しているのではないか。
立憲民主党は中・低所得世帯に月3千円のエネルギー手当を支給し、中小企業にも月最大50万円の電気・ガス補助金を給付する対策を公表。加えてガソリン価格が3カ月連続で高騰した場合、価格を引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を提案している。
同条項は東日本大震災の復興財源確保などのために凍結され、解除には法改正が必要だ。
エネルギーに対する補助は多額の財源を必要とし、化石燃料に補助すれば脱炭素の流れと矛盾することにも留意する必要がある。終了時期の判断も難しい。
ただ、富裕層や円安で潤った一部大企業を除き、世帯の大半や中小企業が向き合う日常はあまりに厳しい。支援を失い、暮らしが足元から崩れては元も子もない。
政府と与野党が胸襟を開いて知恵を出し合い、効果的な支援策を再構築すべきだ。力を合わせなければ、暑い夏は乗り切れまい。