ガソリン補助延長 対象絞った支援に転換を(2024年4月10日『産経新聞』-「主張」)

 
東京都内のガソリンスタンドで給油する人

 4月末で終了するとしていたガソリンなどの燃油価格を抑える補助金について、政府は5月以降も継続することを決めた。

 原油価格の急騰を受け、激変緩和のための一時的な措置として令和4年1月に導入されたが、今回で7回目の延長となる。

 物価高対策として一定の効果はあったかもしれない。ただし財政負担は重く、今年2月末時点で4・6兆円もの支出となっている。今回の延長は期限も区切っていない。継続するのであれば、低所得層や中小・零細企業など対象者を絞るべきだ。

 ガソリン補助金石油元売り会社に支給され、これを通じてレギュラーガソリンであれば全国平均小売価格を1リットル当たり175円程度に抑えている。現状では、補助金による価格抑制効果は20円以上だという。

 中東情勢の緊迫化を受けて、原油価格は4月に入り、一時5カ月半ぶりの高値を付けた。為替も1ドル=151円台の円安水準が続いている。原油の輸入価格は高値圏が続くとみられ、ガソリン価格も当面下がる見通しがないことは確かだろう。

 だが、補助金で10円の価格抑制効果を得るには月約1千億円が必要という。このままでは財政負担が増すばかりだ。

 価格高騰は省エネを促す起点となり得るが、際限なく補助を続ければ、むしろ化石燃料の利用促進につながる面がある。斎藤健経済産業相が「脱炭素化の観点から、いつまでも続けるものではない」と述べたように脱炭素政策にも逆行する。

 政府は一方で、電気・ガス代を抑えるための補助金については5月の使用分を最後に終えることにした。液化天然ガス(LNG)や石炭の輸入価格がロシアのウクライナ侵略前と同水準に落ち着いていることを理由にしているが、ガソリン補助金と判断が分かれたことで政策の方向性がみえづらくなった。

 今春闘では大企業を中心に力強い賃上げが確認され、日銀はマイナス金利政策解除などの政策転換に踏み切った。やみくもに価格を抑えようとする物価高対策も転換すべきときだ。燃料費負担への補助は真に支援を必要とする層に絞り、それ以外はもっぱら省エネや脱炭素を促す支援策などに主軸を置く。そんな「出口」に向けた戦略を政府は早急に示す必要があろう。