電気・ガス代がはね上がる…標準世帯で「年3万円増」 理由は「政府」 補助は終了、再エネ賦課金はアップ(2024年4月12日『東京新聞』)

 
 電気・ガス料金の負担を軽減する政府の補助金が、5月使用分を最後に終了する。電気料金は、再生可能エネルギー普及のため料金に上乗せされる賦課金も2024年度は増える。その結果、本年度の電気・ガス料金は標準世帯で約3万円の負担増になる。物価高に加え、実質賃金が23カ月連続のマイナスと、家計の厳しさが増す中、消費行動への影響も懸念される。(山中正義)

◆4月、5月、6月と段階的に

 「物価高で困っていると周りもよく言っている。補助がなくなると大変」。足立区の都営住宅で夫と年金生活を送る女性(78)は落胆した。暑さや寒さの厳しい季節は冷房・暖房機器の使用が欠かせない。電気料金が1万円を超える月もあるといい、「今まで以上に節約を工夫しないと」と頭を悩ます。
 補助金は4月使用分までは、電気料金で1キロワット時当たり3.5円、ガス料金で1立方メートル当たり15円がでるが、5月でほぼ半減。6月以降は廃止され、電気料金負担は標準世帯(使用量400キロワット時)で月1400円、ガス料金負担は標準世帯(同30立方メートル)で月450円まで増える。
 電気料金の負担増は補助金の影響だけではない。太陽光発電など再エネ普及のため国民が負担する「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」の引き上げでも上乗せされる。今年4月からの単価は前年度比で2.09円増の1キロワット時当たり3.49円。標準世帯の負担増の額は月836円、年では1万32円に上る。23年度と比較すると、補助金廃止と賦課金の増加を合わせた負担増は2万9437円になる。

 電気・ガス料金の補助 ロシアのウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰や円安による物価高を受け、政府が2023年1月の使用分から負担軽減策として開始。小売事業者などへの補助金を原資に一定額を値引きしている。当初、家庭向けで電気は1キロワット時当たり7円、ガスは1立方メートル当たり30円の補助だったが、同9月使用分からともに半減。今年5月使用分は電気1.8円、ガス7.5円へ減額する。液化天然ガスLNG)や石炭の輸入価格が、高騰前の水準まで下がったため、5月使用分で廃止する。ただし「国際情勢の変化などで緊急対応が必要となった場合には、迅速かつ機動的に対応していきたい」(斎藤健経済産業相)と復活に含みも持たせている。

 電気料金には、燃料価格の変動を反映する「燃料費調整額(燃調)」も含まれている。4月使用分の料金は、燃調で値引きされた事業者もあったが、大手電力10社すべてが値上がりする。燃調は毎月変動するため、今後の燃料価格次第で電気料金負担が緩和される可能性もあるが、第一生命経済研究所の新家(しんけ)義貴氏は「昨年度と比べた場合、負担が増えるのは間違いない」と強調する。
 厚生労働省が今月8日に公表した2月の毎月勤労統計調査では、物価変動を考慮した実質賃金は前年同月比23カ月連続のマイナスと、物価高に賃上げが追いついていない状況が続く。新家氏は、電気・ガス料金の負担が増すことで「賃上げの一部が相殺され、消費に影響が出るかもしれない」と指摘する。