電気・ガス補助 打ち切りの影響心配だ(2024年4月4日『北海道新聞』-「社説」)

 政府は家庭や企業の電気・ガス代を抑える補助金について5月使用分で終了することを決めた。
 液化天然ガスLNG)や石炭など燃料価格がロシアのウクライナ侵攻前の水準に戻ったためだ。
 利用者にとっては実質値上げと同じである。道内も含め酷暑で空調代がかさむ時期を控え、家計や企業活動に打撃を与えかねない。
 補助金は電力会社などを通じた間接的なものであり、北海道電力など大手各社はこの間に大幅値上げを実施している。政策効果を薄めていないか検証こそが必要だ。
 一方で石油元売り会社への支給を通じたガソリン補助は継続するという。円安の影響は変わらないのに対応の差に首をかしげる
 場当たりでなく、政府は困窮世帯や中小企業などを直接補助する制度の再構築を図るべきだろう。
 電気・ガス代の補助は物価高対策として昨年1月使用分から開始した。標準世帯の月額で電気は1400円、ガスは450円の価格抑制効果を見込んでいる。
 導入時に比べ輸入燃料価格は安定したかもしれないが、ここにきてLNG価格は上昇基調だ。再生可能エネルギー普及目的の賦課金上昇などもあり、大手電力は今月使用分から料金を上げている。
 補助打ち切りは物価高に拍車をかける恐れがある。春闘で相次ぐ賃上げの成果も低減してしまう。
 東京商工リサーチの調べでは、道内企業の3割超は今もコスト上昇を価格転嫁できておらず、さらなる経営への打撃が心配だ。
 斎藤健経済産業相は会見で、国際情勢の変化などで燃料価格が急騰した際は「迅速かつ機動的に対応していきたい」と述べた。
 裏を返せば、電力ガス大手の燃料調達に支障が出ない限りは補助を再開しないようにも見える。利用者に寄り添う姿勢に欠ける。
 ガソリン補助の継続は「中東情勢の緊迫化」などが理由だ。全国平均小売価格を1リットル当たり175円程度に抑えるのが目的で一昨年1月に始めたが、終息が見通せず期間延長が度重なっている。
 ただドルベースの原油価格は2年前から3割ほど下落しており、高止まりは円安の影響が大きい。化石燃料への補助は脱炭素政策に逆行するとの指摘も根強い。
 道内など公共交通が脆弱(ぜいじゃく)な地域ではガソリン補助は重要であるが一律の元売り支援は疑問が残る。
 低所得層や中小物流、農林水産業などに直接届く給付金や、ガソリン税を一部軽減するトリガー条項の凍結解除も検討する時だ。