馬場氏と吉村氏が語気強め言い合う場面も 会合の「非公開」動画データから読み取る維新リーダー2人の「ホンマの関係」 吉村氏は「溝が生じているとかいうのはない」と改めて強調(2024年7月4日『FNNプライムオンライン』)
「後ろからバンバンバンバン仲間を撃つことをすれば、すぐに日本維新の会という政党はつぶれていく」
馬場氏と吉村氏が語気強め言い合う 維新「説明会」
6月26日、日本維新の会・馬場伸幸代表のこの発言から始まった「説明会」。国会での対応をめぐって、説明を求める地方議員らの声が高まる中、吉村洋文共同代表が「フルオープンでの総括」を求めて、開催が決まったものだ。
実際にはフルオープンとはならず、報道陣は馬場代表の冒頭あいさつが済むと退出となった。
関西テレビは、「非公開部分」のほぼ全てを収録した動画データを新たに独自入手。 そこには、維新の2トップである、馬場代表と吉村共同代表による激しいやり取りが残されていた。
■自民との「大ゲンカ」何を指す?
吉村共同代表:大ゲンカの中身って何なんだろうということも、しっかりと詰めていけたらと思うんです。誰がどうだましたのかということと、大ゲンカの中身というのはどこら辺まで考えているか。考えがあれば、あればでいいんですけど、教えてもらいたいなと思います。
馬場代表:子供のケンカじゃないので、どつき合いするわけでもないですし、立憲民主党のような、全て妨害工作に入るというわけでもありません。
政治とカネの問題をめぐる政治資金規正法の改正で、維新は自民党と協議し、政策活動費の領収書を10年後に公開するなど、法案を修正させた上で、衆院では賛成していた。
しかし維新が「賛成の前提条件」と捉えていた、国会会期末までの旧文通費(調査研究広報滞在費)の改革が頓挫したため、参院では一転して反対に回った。
維新執行部は「ウソつき内閣」「自民党と大ゲンカ」と攻撃したが、果たして「大ゲンカ」とは何を指すのか。
馬場代表が続ける。
馬場代表:万博、その後のIR、過去にはG20会議、そういったことについては、やはり政府側と協力し合いながら進めてきた経緯もあります。ですから、全てちゃぶ台を返して『もう二度とお前らと口きくか』というケンカではありません。一言で言うと選挙です。選挙で自民党に勝つということをやって、我々の議席数を無視できないぐらいまで増やす。
馬場代表は、「この先、どこが与党になるか分からない」と前置きした上で、与党をねじ伏せ、悲願の政策を実現させることが、「ケンカに勝つ」ことだという。
一方の吉村共同代表も食い下がる。
その様子をリモートで見ていた維新関係者は、「吉村さんは相当怒っていた。プルプルと震えていた」と振り返る。筆者も、興奮状態でいつもより早口になっている印象を受けた。
吉村共同代表:僕の考え方なんですけど、もう政策活動費について、完全廃止にすべきじゃないかと僕は思っているんです。これは皆さんと考えがちょっと違うかもしれないけれど、政策活動費そのものがブラックボックスになっていて、本当に維新にとって必要なのかと。維新は政策活動費をゼロにして完全撤退するんだという中で、自民党とぶつかっていくというのが、僕はやるべき方向性、ケンカのやり方じゃないかな、というふうに思っています。
維新の藤田文武幹事長は、政策活動費について会食のほか、講師への謝礼、選挙などのデータ分析の支出があるとしてきた。 支出先は「維新に協力している」ことを公にしたくないケースが多く、「政党の機密性を守るため、政策活動費は必要だ」という説明だ。機密性と公開性のバランスを考えて「10年後に領収書を公開する」という主張で、それを盛り込んだ法案が可決・成立している。
しかし、場の空気は圧倒的に「政策活動費は廃止」だったのだろう。藤田幹事長はこの場で、「廃止を前向きに検討する」ことを約束した。
■攻守交代?噛みつく馬場代表
その後、吉村共同代表の次の質問が、馬場代表の逆鱗に触れることになる。 吉村共同代表:もちろん万博とかIR、これはもちろん我々は国家のためにやっているわけであって、自民党のためにやっているわけでは僕はないと思っていますので、いろんな批判も我々受けますけれども、やっぱりそこで正面から、改革でぶつかっていくというのは僕はあるべき姿じゃないかなと。 馬場代表:ちょっとさっき共同代表が言った中で、こっちが取り間違えてるんやったら言うてほしいんやけど、万博とかIRは別に、自民党のためにやってるんじゃないです。ただ、IRの許可が下りるときもそうであったように、堂々と自民党と真っ向からケンカしても、ただ邪魔されるだけなんで、そこをよく理解しておいていただかんと。何か『大阪から政府に対してモノを言うの当たり前やろ、噛んでいけるの当たり前やろ』と、そういう考えを持たれてたら、われわれも立つ瀬ない。そういうことを理解してほしいですね。 吉村共同代表:僕はやっぱり方向性としては賛成なんです。賛成なんです。結果としてできないからって何か大きく批判するっていうことではないとは思っているんですけれども。ただやっぱりね、(自民と同じ)船に、政治とカネの問題で乗ってるのは、僕は政策活動費だなというのはちょっと思ってて、ここはもうあの… 馬場代表:政策活動費はさっきもう話が終わって、今後の展開どうするか引き取らせてくれって藤田幹事長が言うてるわけね。その話はもう終わり! 吉村共同代表:分かりました。ほんならもう… 馬場代表:俺が聞いてるのは、俺が聞いてるのは、『万博とかIRは自民党のためにやってる』と共同代表が言うたから、それどういう意味なのかなっていうことを教えてほしい。 吉村代表は引き下がろうとするが、馬場代表は追い討ちをかけるようにたたみかける。 馬場代表:自民党のためにやってるんと違うやんか。俺が自民党のためにやってると言うたみたいに、捉まえたんかなって思った。 吉村共同代表:いや、それはないですよ。自民党のためにやってるわけじゃない。国のためにやってる。 馬場代表:じゃあなんで、そんなこと言うの?皆がこっちで協力して、何とかそれがうまいこといくように日々努力してるわけ。大阪のメンバーは大阪のメンバーでみんな努力してくれてる。だから一致団結してやるから、ええ方向にどんどん進んでいってる。自民党とケンカすることと、IRと万博のことと絡めること自体が、ちょっとおかしいと思うよ。 吉村共同代表:そうです。だからそれは関係ないということだと思います。 馬場代表:それは吉村共同代表が言うた。『自民党のためにやってるんじゃない?』ということ。俺らが自民党のためにやってるかのように誤解されるから、申し上げてるだけ。 吉村共同代表:分かりました。それはその通りだと思います。国のためにやってる。なので政策活動費は、是非廃止してもらいたい。廃止すべきだというのが僕の考え方…です。 馬場代表からの「圧」に押されながらも、「政策活動費の廃止論」を最後にもう一度ねじ込んだところで、吉村共同代表の意見表明は終わった。
■白熱の議論か、対立の可視化か
続いて、旧文通費改革を最初に訴えたことで知られる小野泰輔衆院議員が発言。 小野泰輔衆院議員:私はこういう場は必要だと思う。こういう場で、とにかく言いたいことはみんな言う。そしてそれを執行部が受けて、どうするかということを是非詰めていただきたい 維新は結党以来、白熱した激しい議論を繰り返してきたという。今回もその一環だった、との見方もある。 一方で別の維新関係者は、「馬場さんと吉村さんの対立が、はっきり可視化されてしまった」と語る。 最近、馬場代表と吉村共同代表の意見の食い違いが目立つ。 政治資金パーティーについては、馬場代表が「存続」、吉村共同代表は「禁止」を主張していた。与党との距離感の考え方も異なる。 さらに、馬場代表が「大阪都構想」への3度目の挑戦に意欲を示した際も、吉村共同代表は否定こそしなかったものの、「何らかの民主的プロセスが必要」などと距離を置くような姿勢をみせている。複数の維新関係者は、「3度目の挑戦なんて、軽々しく口にしてほしくない」と、一様に冷ややかな反応だ。 馬場代表の発言には、党内の結束を呼び掛けるフレーズが増えている。「後ろからバンバン」発言もその一環だと思われる。トップが結束を呼び掛ける時は、結束していない時であると相場が決まっているものだが、果たして維新はどうだろうか。 吉村共同代表は7月3日の会見で、「軋轢が生じているだとか、何か溝が生じているとかいうのはない。馬場代表を中心にして全員が一致して進んでいく、改革を実行していくということは当然だと思っている」と、馬場代表との対立を否定した。 しかし、「説明会」の動画を見れば見るほど、2人の発言の端々に、何とも言いようのない「トゲ」がある感じがした。 (関西テレビ報道局東京駐在 鈴木祐輔)