最悪の場合、指切断…打撲のはずが「尋常じゃない痛み」 受診したら致死率3割の「人食いバクテリア」感染 27歳野球選手の壮絶な闘病体験(2024年6月11日『信濃毎日新聞』)

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2度の手術を経て回復し、リハビリを始めた信濃グランセローズの滝野要さん=4日、長野県中野市
 突発的に発症し致死率が約3割と極めて高い「劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症」の患者が長野県内でも増えている。県によると、昨年は1999年に統計を取り始めてから最多の23人の届け出(速報値)があった。5月にはルートインBCリーグ信濃グランセローズの外野手、滝野要さん(27)が感染。幸い2度の手術を経て回復したが、滝野さんは「尋常じゃない」痛みで3日間眠れなかったと振り返る。菌が侵入したとみられる左手の中指は、まだ思うように動かせない。
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感染し腫れ上がった滝野さんの左手。痛み止めも効かない痛みに襲われた(本人提供)
 5月20日、左手中指に痛みが出た。前日は群馬県で行われた試合に出場。出塁時に「ベースに指を突いたのかな」と思い、長野市内の整形外科を受診した。この時は打撲と診断された。しかし、福島県へ移動した21日、左手全体がぱんぱんに腫れ上がった。痛み止めも効かない激しい痛みに、「打撲じゃない」。数日前に左手中指に切り傷を負っていた。「菌が入ったのかも」。22日夜にチーム拠点の中野市に戻り、総合病院を受診した。
 左手は化膿(かのう)しており、医師から緊急手術を―と言われたが、「しばらく野球ができない…」と決断できなかった。23日朝に受診した別の病院でも緊急手術を勧められた。この日の夕方に手術を受け、たまっていた膿(うみ)を取り除いた。劇症型溶血性レンサ球菌感染症と診断されたのは手術後のことだ。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は「人食いバクテリア」とも呼ばれ、進行が早ければ、指が壊死(えし)して切断する可能性や命の危険もあった。29日に再び手術を受け、菌が残っていないことを確認した。
 6月3日に退院し、4日にはチームの練習に姿を見せた。腫れは少し引いたが、左手中指はまだ「あまり感覚がなくまひしている」。それでも「また思いっきりプレーがしたい」とリハビリに励む。滝野さんは自身の感染経験を踏まえ、「我慢せず、おかしいと思ったらすぐ病院で診てもらってほしい」と呼びかけている。
(黒岩美怜)