非正規公務員「再採用2回まで」の制限を撤廃 人事院 雇用安定に前進、でも「いつでも切られる」不安残る(2024年6月29日『東京新聞』)

 
 人事院は28日、国の非正規公務員(期間業務職員)について、公募試験をせずに再度の採用ができる回数を原則2回までとする「3年目公募」の制限を撤廃すると各省庁に通知した。3年目公募の際に雇い止めが増えることへの懸念に対応した形で、雇用の安定に寄与する可能性がある。(畑間香織)

 非正規公務員 有期雇用で働く国や地方自治体の職員。内閣人事局によると、期間業務職員と呼ばれる国の非正規職員は約3万8000人(2023年7月時点)いる。省庁の事務補助員やハローワークの相談員が多い。総務省によると、会計年度任用職員と呼ばれる地方の非正規職員は約66万人(23年4月時点)。保育士や司書、各種相談員など専門職に多いのが特徴。

◆国の制度は地方の非正規地方公務員にも影響を与えていた

 人事院が昨年8月以降に実施した各省庁へのヒアリングの中で、再採用者の3年目に公募することで、能力や経験のある職員が公務職場から流出しているとの指摘を受けたため、見直すことにした。優秀な人材の確保が目的だという。
非正規公務員の採用のイメージ

非正規公務員の採用のイメージ

 もともと期間業務職員は、原則毎年公募して採用する。ただ、勤務実績などが認められれば、同じ職員を「連続2回を限度」に公募によらず再採用できると、同院が2010年に各省庁に通知。再採用を2回までに制限する理由は「国民が公務に応募する機会を広く設けるため」(担当者)とされていた。
 今回、再採用の制限を撤廃することで、スキルや経験のある職員の再採用を繰り返すことが可能になるものの、公募によらない再採用を続けるか、公募をするかの判断は各省庁に委ねられており、運用が今までと変わらない可能性もある。
 再採用を2回までとする方針を巡っては、総務省も国のやり方を地方自治体に例示しており、非正規地方公務員の採用にも影響を与えていた。同省は今回の制限撤廃も28日に自治体に示した。 

◆3年目公募「パワハラやセクハラの温床」とも

 非正規公務員の「3年目公募」の制限が撤廃された一方で、毎年公募をかけるという原則そのものは維持される。このため今回の見直しに一定の評価をする専門家も「雇用が不安定な現状は変わらないのでは」との懸念が強い。
 関東地方のハローワークで期間業務職員として働く50代女性は見直し後も「気に入らない職員をいつでも切れる状態は変わらない」と話す。雇用に期限のない「無期雇用」にして、公募制度を撤廃しない限り、当事者の不安は消えないという。
街を行き交う人々(記事と写真は直接関係ありません)

街を行き交う人々(記事と写真は直接関係ありません)

 これまで3年目公募はパワハラやセクハラの温床になっているとして、当事者が集会を開いたり市民有志が署名を集めたりするなど、社会問題化していた。
 非正規公務員問題を取材しているジャーナリストの竹信三恵子氏は「今回の撤廃は当事者や労働組合が求めていたので、評価できる」としながらも、仕事が恒常的にあるにもかかわらず1年ごとの採用を維持したことを問題視する。
 最近では、子どもや保護者と長期間かけて信頼関係を築く必要のある東京都のスクールカウンセラー250人が雇い止めに遭ったばかり。この時も「不透明な決定」として批判の声が相次いだ。
 立教大の上林陽治特任教授は、今回の見直し後も1年ごとの採用が維持されるため雇用の不安定さは解消されていないと強調した上で、「人事評価を当事者に開示するなど評価制度の透明性を確保しないと、恣意(しい)的な雇い止めはなくならない」と指摘している。