尖閣に中国海警船 防衛方針を転換すべきだ(2024年6月2日『産経新聞』-「主張」)

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沖縄県尖閣諸島魚釣島周辺を航行する中国海警局の船=4月
 尖閣諸島沖縄県石垣市)周辺の海域を中国海警局の船が徘徊(はいかい)し続けている。5月27日で158日間となり、連続日数で過去最長を更新した。6月1日も4隻が確認され163日連続となった。
 だが、尖閣諸島は日本固有の領土である。中国は1970年代以降、領有権を唱えてきたが一分の理もない。53年1月8日付の中国共産党機関紙「人民日報」を読んでみたらどうか。同紙は、日本の琉球諸島を構成する中に尖閣諸島を挙げている。盗人猛々(たけだけ)しい中国の海警船は直ちに去るべきである。
 令和3年2~7月には尖閣海域で157日連続で海警船の徘徊があった。昨年1年間の出没日数は過去最多の通算352日に上った。ほぼ毎日である。うち領海侵入は42日だった。
 海警船の塗装は海上保安庁の巡視船に似ている。だが、法執行機関の海保とは異なり、海警局は中国中央軍事委員会傘下の「第2海軍」である。漁船に偽装した海上民兵などと結託して尖閣諸島占領に突如動くかもしれない脅威である。
 林芳正官房長官は5月27日の会見で海警船の徘徊が過去最長になったことについて「極めて深刻だ。緊張感を持って警戒監視に万全を期すとともに、中国側に冷静かつ毅然(きぜん)と対応する」と述べた。
 それならば日本政府は、尖閣諸島侵略への対処策を根本から改めるべきだ。海保や沖縄県警が警察行動にとどまるのは当然だが、自衛隊には速やかに防衛出動を下令する方針をとってもらいたい。自衛隊海上警備行動などの警察行動で対応する段階を挟む現行方針は、中国の思う壺(つぼ)にはまるだけだからだ。
 警察行動では自衛隊の武器使用は制約される。一方、第2海軍の海警船は隠し持った武装で思う存分軍事攻撃できる。
日本政府は米政府から、米国の日本防衛を定めた日米安全保障条約第5条の尖閣適用の言質をとってきた。だが、尖閣防衛への米軍の支援は自衛隊の防衛出動が前提となる。早期の防衛出動に及び腰の政府方針では、米軍の登場以前に尖閣を奪うという中国が望んでやまない状況を差し出すだけだ。
 政府は尖閣防衛方針の転換と、海保の増強、尖閣諸島への公務員、自衛隊の常駐に踏み切るべきである。