石垣市の尖閣調査 中国の妨害は容認できぬ(2024年5月6日『産経新聞』-「主張」)

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尖閣諸島魚釣島沖で中国海警船(中央奥)をマークする海上保安庁の巡視船=2024年4月27日、沖縄県石垣市
 
 日本固有の領土である尖閣諸島沖縄県石垣市)で、自然破壊が深刻化している。石垣市の調査船が魚釣島周辺の海上からドローンを飛ばして調べたところ、ヤギの食害が原因とみられる土壌崩落などが確認された。
 尖閣諸島では、センカクモグラなど固有種の絶滅も懸念されている。このままでは貴重な生態系が失われかねない。上陸して詳しく調査し、早急に対策を講じるべきだ。
 石垣市による調査は4月25~27日に行われた。赤外線カメラを搭載したドローンで上空から魚釣島を撮影した結果、自然環境が悪化していることが分かった。海岸に大量の漂着ごみが堆積していたほか、斜面の山肌などが崩れ、広範囲にわたり土がむき出しになっていた。
 魚釣島では昭和53年に政治団体が持ち込んだヤギが繁殖し、草木を食べ尽くすなどの被害が指摘されていた。このため石垣市が上陸調査を求めてきたが、政府は認めていない。
 今回、調査に同行した中山義隆市長は「ドローンだけでは限界がある」とし、上陸調査の必要性を改めて訴えた。当然の要求であり、政府は実施を容認すべきである。
 許しがたいのは中国の妨害活動である。中国海警局の船が尖閣周辺の日本の領海に侵入し、調査船に接近した。海上保安庁の巡視船が調査船を守ったが、安全のため調査活動が一部中止された。
 尖閣は日本の島であり、周辺は日本の海である。海警局船に侵入、徘徊(はいかい)する権利はなく、直ちに立ち去るべきだ。
 中国外務省の報道官が会見で、調査について「(中国の)主権を侵害する挑発行為だ」と述べたのも容認できない。
 中国が尖閣の「主権」を主張しはじめたのは、周辺に石油資源埋蔵の可能性が指摘されるようになった後の1970年代からだ。69年に刊行された中国政府機関作成の地図には中国名の釣魚島ではなく、日本名の「尖閣群島(諸島)」「魚釣島」と明記されている。中国が日本領と認めていた証拠だ。
 沖縄県玉城デニー知事が中国に対し、尖閣の問題で抗議しないのも問題である。尖閣は沖縄の行政区域だ。中国の挑発に抗議するとともに、石垣市と連携し、上陸調査の実現に協力してほしい。