能登地震の復興計画 地域持続へ知恵の結集を(2024年6月2日『毎日新聞』-「社説」)

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白米千枚田を見渡す国道は、奥の隆起岩盤部に仮設道路ができたことで通行車両が戻った=石川県輪島市で2024年5月2日、竹中拓実撮影
 過疎化と高齢化が進む被災地の復興をどう進めるか。日本全体で考えなければならない課題だ。
 能登半島地震の復興計画案「創造的復興プラン」を石川県が発表した。県議会の議論を経て6月中に決定する見通しだ。
 地震で大きな被害が出た奥能登地方は過去10年で人口が約2割減少している。高齢化も深刻だ。こうした現状を踏まえ、民間企業やNPO、ボランティアなど、復興支援を通じて被災地と関わる人とのつながりを活用する取り組みを盛り込んだ。
 特定の地域に興味を持ち、交流イベントに参加したり、副業の拠点にしたりする「関係人口」の拡大を目指す。
 人口減少が避けられない現実を見据え、その対策を打ち出した点が計画の特徴だ。地域外の人々の力を復興に向けたまちおこしなどに生かす。
 その方策の一つに掲げたのが「2地域居住」の推進だ。
 都市部の住民が第二の生活拠点を地方に持つ新しい生活様式として注目されている。計画では、道路の整備によりアクセス時間を短縮することで人の流入促進を図る。ただ、居住者を増やすには交通の利便性を高めるだけでは不十分だ。空き家の活用など住環境の整備が求められる。
 復興を実現していくうえで欠かせないのは住民参加である。
 東日本大震災の復興事業では、行政主導で土地をかさ上げしたものの、住民が避難先から戻らない自治体があった。事業が長期化する中、当初は帰還を望んだ住民の意向の変化に対応できなかったことが一因だ。
 一方、地元の若手商店主らが議論を重ねて商業施設を開業し、観光客でにぎわう地域の中核拠点に育てたケースもある。
 こうした事例を参考に、住民が行政と連携を取りながら、主体的に復興の具体像を描いていくことが肝要だ。
 地震発生から5カ月となる被災地では、今も約3000人が避難所で生活し、仮設住宅への入居を待つ人も多い。
 若者や子育て世代を含めた幅広い層が知恵を出し合い、外部の人々の支援も得て、生活再建と復興を着実に進めることが大切だ。