刑事裁判に国民が参加する意義を再確認したい。
裁判員制度が始まってから15年がたった。今年2月末までに、12万人以上が殺人など重大事件の審理に関わり、約1万6000人の被告に判決を出した。
課題も浮き彫りになった。
裁判員候補者に選ばれながら、仕事などを理由に辞退する人が多い。当初は5割強だったが、近年は7割近くになることもある。
時間に余裕がある人が参加するだけでは、裁判員の構成が偏る。多様な立場や経験に基づく市民の意見を、判決に反映させるという制度の目的が果たせなくなる。
公判が始まるまでの時間が、年々長くなっていることも問題視されている。事前に裁判官と検察側、弁護側で争点を整理する手続きが長期化しているのが原因だ。
法廷での審理を短くし、市民が関わりやすくするための手順だが、裁判の開始が遅れれば証人の記憶が薄れ、審理に影響する。改善の努力が求められる。
一方で、裁判員を務めた人のほとんどが良い経験だったと振り返っている。「人生や社会について深く考えた」と話す人もいる。こうした声を社会で共有していくことが、関心を高める一助になる。
法や司法制度を学ぶ場を増やすことも不可欠だ。
裁判を身近なものにして、司法への国民の信頼を高める。裁判員制度を導入した理念の実現に向け、多くの人が参加しやすい仕組みにしていかなければならない。