入管法の改正案 外国人の権利守れるのか(2024年5月28日『毎日新聞』-「社説」)

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入管法などの改正案に反対し、議員会館前に座り込んで抗議をする人たち=東京都千代田区で2024年5月17日午前9時54分、平田明浩撮影
 外国人の権利がないがしろにされることにならないか。懸念が拭えない。
 問題の多い技能実習制度に代わり、人材確保を前面に出した育成就労制度を創設する入管法などの改正案が衆院を通過し、参院での審議が始まった。
 人手不足の中、外国人労働者の受け入れ拡大につなげるのが狙いだ。新制度では、キャリアアップしながら長く働きやすくなる。
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永住資格の取り扱いを厳格化する規定を批判するミャンマー出身のアウンミャッウィンさん(左)と英国出身のサイモン・コールさん=大阪市北区で2024年5月23日、村田貴司撮影
 しかし、看過できないのは、永住資格の取り扱いを厳格化する規定が設けられたことだ。
 従来、資格を失うのは、不正な手段で許可を得た時などに限られていた。改正案では、税金や社会保険料を納めない場合、法相が永住許可を取り消せるようになる。
 この規定は、技能実習制度の見直しを検討した有識者会議では議題に上がらなかったが、自民党の提言を受ける形で盛り込まれた。
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 永住者の増加が見込まれるため、「義務を果たさない人を放置すれば、不公平感が生まれる」というのが政府の説明だ。永住資格を持つ人は昨年末時点で、在留外国人の4分の1以上に当たる約89万人に上る。
 だが、職を失ったり病気になったりして収入が途絶え、支払いが困難になる事態は起こり得る。
 そもそも滞納があれば、督促や財産の調査、差し押さえなどの措置が取られる。
 滞納を理由に永住資格を奪うのは行き過ぎではないのか。在留資格は、外国人が日本で暮らすための基盤になるだけに、当事者から不安の声が上がっている。
 育成就労制度にも課題が残る。
 技能実習制度では、低賃金や長時間労働が横行していた。原則として転職が認められないため、過酷な環境に耐えられず、失踪する人が後を絶たなかった。
 新制度では1~2年の就労で転職が可能になる。ただ、日本語能力試験に合格することなどが条件で、ハードルは高い。
 母国の送り出し機関やブローカーに多額の手数料を支払い、借金を負って来日する問題への対応も急がれる。日本政府は、相手国に改善を求め続けるべきだ。
 人権侵害を生むことがあってはならない。より良い制度とするための議論を尽くす必要がある。