外国人の権利がないがしろにされることにならないか。懸念が拭えない。
人手不足の中、外国人労働者の受け入れ拡大につなげるのが狙いだ。新制度では、キャリアアップしながら長く働きやすくなる。
しかし、看過できないのは、永住資格の取り扱いを厳格化する規定が設けられたことだ。
従来、資格を失うのは、不正な手段で許可を得た時などに限られていた。改正案では、税金や社会保険料を納めない場合、法相が永住許可を取り消せるようになる。
永住者の増加が見込まれるため、「義務を果たさない人を放置すれば、不公平感が生まれる」というのが政府の説明だ。永住資格を持つ人は昨年末時点で、在留外国人の4分の1以上に当たる約89万人に上る。
だが、職を失ったり病気になったりして収入が途絶え、支払いが困難になる事態は起こり得る。
そもそも滞納があれば、督促や財産の調査、差し押さえなどの措置が取られる。
育成就労制度にも課題が残る。
新制度では1~2年の就労で転職が可能になる。ただ、日本語能力試験に合格することなどが条件で、ハードルは高い。
母国の送り出し機関やブローカーに多額の手数料を支払い、借金を負って来日する問題への対応も急がれる。日本政府は、相手国に改善を求め続けるべきだ。
人権侵害を生むことがあってはならない。より良い制度とするための議論を尽くす必要がある。