日本版DBS 子供守るため創設を急げ(2024年5月18日『産経新聞』-「主張」)

キャプチャ
仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する「日本版DBS」創設法案が審議入りした衆院本会議
 
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 教育や保育など子供と接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用者が確認する「日本版DBS」創設法案が衆院で審議入りした。
 教員や塾講師らによる教え子への性犯罪が後を絶たず、多くの事例で過去の性犯罪歴が見過ごされていた。今いる子供を守るため、まず創設を急いでほしい。
 法案では、こども家庭庁がDBSの照会システムを構築し、学校や保育所、国が認定した学習塾などに確認を義務化する。性犯罪歴がある人は刑の終了から最長20年、採用されないなど就業を制限される。
 「職業選択の自由」を保障する憲法違反だとする慎重意見もあるが、そもそもこれを規定した憲法22条は「何人も、公共の福祉に反しない限り」と自由の範囲に制限を設けている。子供の生命、健康に対する危険を防止、除去、緩和する目的の法案創設は合憲と判断すべきだ。
 こども家庭庁によると、性犯罪の有罪確定後、5年以内に再び性犯罪に及び、有罪が確定した再犯率は13・9%だという。決して低い数字ではなく、示談による起訴猶予や摘発に至らなかった件数は含まれていない。また、小児わいせつ型の性犯罪で有罪確定した人のうち、性犯罪の前科が2回以上で、前科も小児わいせつ型だった人は84・6%にのぼった。
 彼らを再び子供に向き合わせることがないよう、システムを構築することは急務である。
 同時にこれは、小児わいせつ常習者らの更生を助ける仕組みでもある。薬物依存者の更生に必要なのは、彼らから薬物を遠ざけることだ。性犯罪や小児わいせつの常習者にとっても、それは同様である。
 法案では、照会できるのは裁判所で有罪判決が確定した「前科」に限定される。示談成立による「起訴猶予」などの不起訴事案や行政による懲戒処分は含まれない。痴漢や盗撮も照会対象に加えられたが、下着を盗んだ窃盗罪などは除外された。
 個人事業主のベビーシッターや家庭教師は確認の対象外で、DBSによって教職を失った人がこれらに流れて子供を性犯罪の対象とする恐れも残る。
被害者団体などは照会対象を不起訴事案や他罪種に広げることも求めている。まず創設を急ぎ、法案の不備は間断なく見直す必要がある。