なぜ日本で「結婚しない人」が増えたのか?…「結婚したい」のに「結婚できない」若者たち(2024年5月17日『現代ビジネス』)

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 現代の「日本の構造」、どれくらい知っていますか? 
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 日本の共働き世帯数、日本人の労働時間、日本の労働生産性、事業所の開業率……
 『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』では、橘木俊詔氏が少子化、格差、老後など、この不安な時代に必要なすべての議論の土台となるトピックを平易に解説します。50の項目で、日本の「いま」を総点検! 
 ※本記事は、橘木俊詔『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』から抜粋・編集したものです。
生涯未婚率の上昇
 『日本の構造 50の統計データで読む国のかたち』の中で、単身世帯の増加を述べたが、その理由の1つとして結婚しない人の増加を挙げた。すなわち生涯を一人身で過ごす人の増加である。そこでここでは結婚しない人の増加の理由を探究しておこう。
 表1(※外部配信でお読みの方は現代新書の本サイトでご覧ください)は1947(昭和22)年から2019(令和元)年までの婚姻率(人口1000人あたりの件数)を示したものである。後に述べる離婚率(人口1000人あたりの件数)も同時に掲載している。
 婚姻率に注目すれば、次のようなことがわかる。第1に、年代によってかなり大幅な振幅はあるが、戦後のトレンドとしては、結婚する人は減少してきた。一番高かった1947年の1.20%から2019年の0.47%まで低下しているので、40%ほどまでの大幅な低下である。かなりの数の日本人は結婚しなくなった、と結論してもよい。
 第2に、終戦直後の数年間に婚姻率の高かったのは、戦地から帰還した兵士が多くいたからである。戦争が終了して平和になったので、国民は貧困で苦しんでいたが結婚して家庭をつくりたいという希望は強く、多くの若者が結婚したのである。その後結婚ブームは去って1950年代は0.8%台で落ち着く水準までに低下した。
 第3に、それが過ぎると1960年代から1970年代にかけて戦後のベビーブーム世代がいわゆる「結婚適齢期」に達し、婚姻率は再びかなり上昇した。とはいえ終戦直後の高い婚姻率ほどではなく、この頃から非婚の傾向が始まったのである(後述)。
 第4に、第一次ベビーブーム世代の結婚ラッシュが終了すると婚姻率は減少に転じたが、その減少率はかなり激しかった。1980年代後半には0.6%前後まで低下した。その後第一次ベビーブーマーの子どもが適齢期を迎えると、婚姻率は少し上昇に転じた。
 第5に、その頂点が1994(平成6)年頃であり、その後は再び低下の傾向を示して、2019年は0.47%にまで低下したのである。このようにして日本では結婚をしない人が増加した。その証拠は前の生涯未婚率の推移でも示された。今では男性の4分の1程度、女性の5分の1弱は結婚しない。なぜ男女で差が生じるかは次項で述べる。
 なぜこれほどまでに結婚しない人が増加したのだろうか。多少は減少したが、「結婚適齢期」の人の90%前後は結婚したい、家族を持ちたいと希望している。それは表2(※外部配信でお読みの方は現代新書の本サイトでご覧ください)でわかる。
 ところが実態はそれを示していない。それを説明するために、大きく2つのグループに区分する。1つは結婚の意思がないグループ、もう1つは意思はあっても、それを達成させていないグループである。
 前者については次のような理由がある。
 1:一人の生活の方が気楽と思うし、誰にも邪魔されず自由な生活を楽しみたい。
2:女性で働いて所得のある人は、経済的に夫に頼る必要がない。
3:家族がいると自分の仕事を遂行するうえでマイナスになることがある。例えば配偶者の転勤のときにどうするか、など。
4:家族を持つことにより、リスクが増えることを好まない。相手の親族との付き合いを面倒がるとか、他にもさまざまなリスク(家族が病気になる、介護で苦労する、家族の生活費もかかるなど)を負うことを嫌う。
 以上をまとめると、結婚をして家族を持つよりも、一人身の方が自分の人生を自由に送れると期待している。これは表2の統計ソースでも確認できる。
 では一人身であれば、自分にさまざまな不幸が舞い込んだときにどう対処するのか、といった不安があるに違いないとのコメントが可能である。家族がいるときのリスクと安心感と独身でいるときの自由と不安感、これらを天秤にかけてどちらかを選択しているのであろう。
 結婚の意思はあっても達成していないことについては次のような理由がある。
 1:異性とうまくつきあえる自信がない。
2:異性と知り合う場所がない。これに関しては、今まではおせっかいなおばさんがいて、見合い結婚の橋渡しをすることもあったが、今は恋愛結婚の時代なので自分で探さねばならない。
3:結婚は二人の男女が共同の経済生活をするのが条件であるが、若いときは所得が低い事情がある。
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橘木 俊詔

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