国立社会保障・人口問題研究所が公表した日本の世帯数の将来推計=グラフ=によると、超高齢社会では高齢者は人口だけでなく1人暮らし(単身世帯)も増える。孤立を防ぎ、安心して暮らせるような環境を整える必要がある。
推計によると世帯総数は2030年をピークに減少に転じるが、単身世帯は50年に2330万世帯となり、全世帯の44・3%を占める。18年の前回推計より速いペースで世帯の単身化が進む。
特に、単身高齢者が増加し、世帯総数に占める65歳以上の単身世帯は50年には2割を超える。
65歳以上の単身世帯の未婚率は男性が20年の33・7%から50年には59・7%、女性は11・9%から30・2%に増える。婚姻率や出生率が低下し、結婚・出産に至らなかった人が高齢期も1人で暮らす姿が浮かぶ。
子どもやきょうだいなど家族がいない単身高齢者は、家事や金銭管理、受診の判断、行政への相談を代わりに担う人がいない。地域で孤立すれば、日常生活にも支障が生じかねない。
1人暮らしを支えるための介護ニーズが高まれば、介護保険制度は総費用の増大が避けられず、サービスの効率化や財源、人材の確保に知恵を絞らねばならない。
住宅確保も課題だ。1人暮らしは孤独死を警戒するあまり、入居を断られる事例が少なくない。
政府は、対策強化の法案を国会に提出している。安定した住宅が必要な人に自治体が経済支援する「住居確保給付金」の拡充を盛り込んだ法案は17日に成立した。
賃貸住宅を高齢者に貸しやすくするため、NPOや社会福祉法人などの「居住支援法人」が高齢者に代わって賃貸住宅を借り上げ、入居中も見守りや安否確認などのサービスを提供する仕組みを創設する法案も提出されている。早期の成立を望みたい。
地域社会での「見守り力」を高めることは単身高齢者にとどまらず、子育て世帯や障害者の支援にもつながる。地域に住む人を孤立させないために「隣人」を増やす取り組みをさらに広げたい。