非正規労働者の春闘、半数は「賃上げゼロ」だった 過去最高の「賃上げ率6.02%」が行き渡らない現実(2024年5月9日『東京新聞』)

 
 飲食店やスーパーなどで働くパートら非正規労働者が勤務先に一律10%以上の賃上げを求める「非正規春闘」の実行委員会は9日、都内で会見を開き、賃上げ要求をした107社のうち、48社が賃上げに応じない「ゼロ回答」だったと明らかにした。賃上げを勝ち取ったケースもあったが、実行委のメンバーは「一部にとどまった」と説明した。

◆「今秋の最低賃金の改定を見て検討する」「業績が悪い」

 実行委によると、非正規春闘で賃上げをしないと回答した企業は「今秋の最低賃金の改定を見て検討する」「業績が悪い」などと理由を挙げた。
非正規の賃上げを求める「非正規春闘」に参加する労働組合の幹部ら=東京・霞が関で

非正規の賃上げを求める「非正規春闘」に参加する労働組合の幹部ら=東京・霞が関

 労組中央組織の連合が8日に公表した春闘の第5回集計では、非正規の賃上げ率は6.02%と過去最高だった。これに対し、同実行委が非正規で働く人を対象に1~8日に聞いたインターネット調査(回答数251件)では、72.5%が「今年1月から賃金は上がっていない」と回答。労組に入っていない大部分の非正規には賃上げが広がっていない現実がうかがえる。

◆「労働組合の存在が届いていない」

 実行委に加わる労組の一つの首都圏青年ユニオン(東京都豊島区)の尾林哲矢氏は「春闘がこれほど注目されても賃上げは一部だけ。賃上げが必要な非正規に労働組合の存在が届いていない。組合の影響力の小ささを感じている」と話した。今後は非正規が労組とつながる働き掛けをしたいという。
 非正規春闘は個人加盟の労組が昨年から始めた運動で、社内に労組がないなど賃上げの手段を持たない非正規が企業の枠を超えて賃上げを求めている。今年は23労組に加盟する非正規約3万人が、勤務先約120社に賃上げを求めて交渉している。(畑間香織)
 

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