団体球技の快挙 パリ五輪へ期待が膨らむ(2024年5月2日『産経新聞』-「主張」)

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サッカーU―23アジア杯準決勝、イラク戦の前半、先制ゴールを決める細谷真大(左)。8大会連続12度目の五輪出場を決めた=4月29日、ドーハ(共同)
 
 サッカー男子の23歳以下日本代表がパリ五輪への出場を決めた。1996年アトランタ五輪から8大会連続の快挙である。
 「快挙」と書けば必ず「出場ぐらいで大げさだ」との声が届く。だが五輪のアジア枠は3・5(アジア4位はアフリカ4位とプレーオフを実施する)で、ワールドカップの4・5(2026年大会から8・5)に比して狭き門であり、世界でも8大会連続出場は韓国の9連続に次ぐ。その韓国もパリ五輪への出場切符を逃し、記録は「9」で途絶えた。
 銅メダルを獲得した1968年メキシコ五輪からアトランタ大会の出場まで28年の空白があったことを思えば、8大会連続は十分に称賛に値する。
 これでサッカー、バスケットボール、7人制ラグビーの男女、バレーボール、ハンドボール水球の男子、ホッケー女子がパリ五輪出場を決めた。バレー女子も可能性を残す。五輪への自力出場はバスケ男子が48年ぶり、ハンド男子は36年ぶり、バレー男子は16年ぶりだ。
 パリでの実施団体球技7競技の全てに男女いずれかの日本代表が自力出場することになり、これは32年ロサンゼルス大会以来92年ぶりという。当時の実施団体球技は男子の水球とホッケーのみであったから、実質は史上初の快挙といえるだろう。
 自国開催五輪後の国内競技は衰退しがちだが、これは各競技団体の継続した若年層強化策や個々の選手の海外雄飛を後押しした結果である。団体球技の活躍は、パリ五輪本番を大いに盛り上げてくれるはずだ。
 ただしアジアの競技レベルは伸長が著しい。サッカー男子が出場権を獲得した23歳以下のアジア・カップでも中東勢に加えて、日本が決勝を戦う中央アジアウズベキスタン、韓国が敗れて出場権を失った東南アジアのインドネシアなどが従来の勢力地図を塗り替えつつある。
 それは、どの競技でも同様である。韓国はサッカー男子のみならず、ハンドボール女子を除く全ての団体球技で五輪出場権を逃し、国民を落胆させた。過去の実績は、何ら未来を約束しない。これを教訓としなければならない。
団体球技の代表チームの活躍は国民の希望であり、活力である。この隆盛を一過性とせず、強化の継続を切望する。