東京五輪の開会式で入場行進する
難民選手団の選手たち=国立競技場で2021年7月23日午後8時39分、大西岳彦撮影
世界に戦火が絶えない中、オリンピックは「平和の祭典」としての理念を示せるだろうか。
アフガニスタンやシリア、イラン、
南スーダンなど11カ国から過去最多の36人の選手が選ばれた。新競技のブレイキンを含め、12競技に出場する予定だ。
難民選手団が初めて結成されたのは、2016年
リオデジャネイロ五輪だ。当時、アフリカや中東から欧州への難民が急増しており、4カ国から10人が出場した。21年の
東京五輪では11カ国の29人に膨らんだ。
戦争が続く
ウクライナや
パレスチナのアスリートは今回の
難民選手団に入っていないが、安心して競技に打ち込める環境ではないだろう。選手やコーチにも多くの死傷者が出ている。
ウクライナへ侵攻したロシアとそれに協力した
ベラルーシは、国としての参加を認められていない。ただし、侵攻を積極的に支持していないなどの条件を満たす「中立」の立場の選手は個人資格で出場できる。
国連によると、紛争などで避難を強いられている人は世界で1億1000万人以上に上る。
「
難民選手団は特定の国の代表ではなく、同じ経験を共有する1億人以上の代表です」。団長を務める
アフガニスタン出身の女性、マソマハ・アリザダさんの言葉だ。
IOCは国連とも連携し、支援を継続・拡充していくことが求められる。
難民選手団のユニホームには、中心にハートが描かれたエンブレムがあしらわれる。故郷を追われた世界中の人々の「心の連帯」を促す意味が込められている。
2カ月後に始まるパリ五輪が、平和の尊さを思い起こさせる場となることを願いたい。