「五輪金2000万円→300万円」という新聞の見出しを見て「→」は反対向きでは、と目を疑った。2016年リオ五輪や21年東京五輪では金メダルで2000万円と定められていた日本陸連の報奨金が、今夏のパリ五輪では半額どころか300万円と驚きの減額。なんでも値上げの世の中の流れに逆行もいいところだ。
銀メダルも従来の1000万円が200万円、銅も800万円が100万円と大幅ダウン。陸上でのメダル獲得はなかなか難しく、リオでは男子400メートルリレーで銀、50キロ競歩で銅、東京では男子20キロ競歩で銀、銅を獲得したが金はない。こんなに一気に下げる必要があったのか。
金目当てで競技しているわけでもないが、「どうせメダルは取れないから」とみられているようで選手はいい気分はしないだろう。世界選手権も22年大会から優勝1000万円が300万円に減額された。ここ数年の収支状況を考慮したと陸連は説明したが、よほど財政が逼迫(ひっぱく)しているのかもしれない。
陸連だけではない。日本水連は五輪出場権をかけた2月の水球世界選手権(ドーハ)への女子代表派遣を予算不足で断念した。「競技団体はどこも財政難。競技会やイベント中止が相次いだコロナ禍が尾を引く上、東京五輪の汚職事件でスポンサーが軒並み撤退したことが大きな影を落としている」と関係者は指摘する。東京五輪のフェンシング・エペ団体で金メダルを獲得した見延和靖が所属企業から1億円の報奨金を贈られ話題になった。陸上の金メダルならそれくらいの価値はある。選手のモチベーションのためにも「借金してでも出そう」と太っ腹に構えてもらいたかった。(今村忠)