国民に舌打ちされる自民党、次期衆院選はどうなる? 元事務局長「首相を代え、どれだけ議席減を抑えるかだ」(2024年5月1日『東京新聞』)

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 衆院3補欠選挙で全敗を喫した自民党。派閥の裏金事件に加え、女性問題を週刊誌に報じられた宮沢博行氏が衆院議員を辞職するなど、組織の「瓦解(がかい)」が止まらないように映る。その要因や岸田政権の今後の見通しについて、元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃氏(70)に聞いた。(大杉はるか)
◆岸田政権は危機への対応が遅すぎる
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衆院3補選について語る久米晃氏
 
―補選は全敗だった。
 「驚きはない。個々の事情はあるが、全体的には政治とカネの問題で、自民への逆風が予想以上に強かったということだろう」
―自民が読み誤ったか。
 「今回の選挙で、ということではなく、昨秋以来、岸田政権はこの問題への対処を誤り続けている。例えば処分も先延ばしした上に中途半端だった。危機への対応が遅すぎるのではないか。首相は『結果を出す』と言い続けているが、何一つ結果が出ていない。支持率は回復しようがない」
 
◆襟を正さぬトップ、声を上げぬ若手
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―自民は政治改革にも消極的に見える。
 「本来は1989年の党政治改革大綱を守っていれば、今回の問題は起こらなかったはずだ。一番上に立つ人が襟を正さないから下も守ろうとしない。一方で30年前の政治改革の時のように、若手議員が声を上げることもない」
―その理由は。
 「昭和20年8月15日(終戦)を経験していない人が政治の中心になり、政治に対する志や使命感が薄れてきてしまっているのではないか。今は、明治維新が忘れられた大正・昭和初期の時代と共通項があると思っている。もう一つは選挙制度。無所属での立候補は制約が大きく、志のある人が出づらい一方、政党には世襲議員が増えてきている」
◆自民支持者は納得できる人でなければ投票しない
―思い切った改革をすれば支持は回復するか
 「難しいのではないか。今、首相の交代を望む世論が大勢になりつつある。大型連休明けに自民内で何らかの行動が起こらなければ、次期衆院選で厳しい結果になる。首相は解散について『全く考えていない』と強く否定し、自分で解散権を封じたということだろう。そう思われても仕方がない状況だ」
菅義偉前首相から、顔を変えて大勝した2021年衆院選の再現か。
 「一度失った信用は簡単には戻らない。国民が(自民に)舌打ちしたくなる状況が何年も続いている。リーダーを代えて議席減をどれだけ抑えるかという話だ。自民の支持者は保守的無党派層。自民候補でも、信用できて納得できる人でなければ、投票しない」
 
 久米晃(くめ・あきら) 1954年、愛知県東浦町出身。80年、自民党職員に。2002年から選対部長、11年党事務局長。19年に定年退職し、現職。