岸田首相の「進退」をかけた闘いが始まった 衆院3補選、自民が唯一の候補を立てた島根1区で負けたら…(2024年4月17日『東京新聞』)

 
 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の発覚後、初めての国政選挙となった衆院3補欠選挙は、内閣支持率が低迷する岸田文雄首相の中間評価の機会と位置付けられる。首相は事件の真相究明や再発防止で後手に回り、自民は2選挙区の不戦敗で早くも負け越しが確定して瀬戸際に追い込まれた。菅義偉前首相が補選・再選挙の「全敗」で求心力を失って半年後に退陣したこともあり、首相の進退が問われる選挙戦となる。(我那覇圭、井上峻輔)
 
記者団の取材に応じる岸田首相=16日、首相官邸で

記者団の取材に応じる岸田首相=16日、首相官邸

◆東京15区と長崎3区では「不戦敗」

 自民の梶山弘志幹事長代行は16日の記者会見で、東京15区と長崎3区の擁立断念に関して「政権与党として一つ一つの補選に候補者を立てるのが本来の姿かもしれない。でも、それぞれの事情がある」と苦境に悔しさをにじませた。「日本の未来を託せるのは自民党しかないということを示したい」(茂木敏充幹事長)と訴えるが、未来を託す選択肢すら示せない状況だ。
 東京15区と長崎3区は前職がそれぞれ公選法違反と政治資金規正法違反に問われて辞職した経緯もあって後任選びは難航。島根1区は、昨年11月に死去した細田博之衆院議長が30年以上にわたって議席を守った保守王国で、公認候補を擁立して総力戦を展開する。

◆裏金事件、統一教会問題で逆風

 ただ、細田氏は裏金事件で逮捕者も出した安倍派の前会長で、政治とカネが最大の争点となるのは変わらない。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との密接な関係が取りざたされた記憶も新しく、党幹部は「選挙運動がしにくく、情勢は厳しい」と漏らす。
 
衆院本会議で麻生副総裁(右)と話す岸田首相=16日

衆院本会議で麻生副総裁(右)と話す岸田首相=16日

 補選の結果が時の首相の退陣につながるケースは少なくない。最近でも菅前首相が新型コロナ禍への対応などで批判を浴び、2021年4月の衆参2補選と参院の再選挙で全敗。7月の東京都議選でも苦戦し、8月にはお膝元の横浜市長選で肝いりの候補者が落選し、9月に総裁選立候補を断念せざるを得なくなった。

◆就任後、勝ち越してはいるが…

 首相は21年10月に就任してからの10補選で7勝3敗と勝ち越しているが、今回は「政治とカネ」の問題による逆風は強い。裏金事件の真相究明に及び腰で、再発防止に向けた政治資金規正法の改正論議でも指導力を発揮できていない。
 自らを党の処分の対象外とするなどお手盛りの対応に終始し、国民の政治不信は高まる一方だ。「島根1区で負ければ、レームダック(死に体)化が進む」(閣僚経験者)と、政権運営が行き詰まる可能性を指摘する声も出始めている。

野党共闘の形は見えず

 野党は3補選で勝利し、首相を一気に追い込む構えだ。野党第1党の立憲民主党は3選挙区に公認候補を擁立した。共産党は東京15区で候補を取り下げて支援に回り、島根1区と長崎3区でも立民を下支えする。
 
 だが、野党は一枚岩ではなく、長崎3区で立民と日本維新の会が激突。東京15区は維新のほか、国民民主党推薦の無所属候補ら野党間で激しい争いを繰り広げる構図となり、足並みはそろわない。次期衆院選での政権奪取に向けた野党共闘の形は見えないままだ。