バイデン氏は、ペンシルベニア州の全米鉄鋼労働組合(USW)本部で演説し、中国から輸入する鉄鋼とアルミニウムの関税率を、現在の7・5%の3倍に引き上げることを検討するよう、米通商代表部(USTR)に求めた。
中国の鉄鋼メーカーが、国から多額の補助金を得て、不当に安い価格で輸出しているというのが理由だ。ペンシルベニア州は大統領選の激戦州で、鉄鋼関連の労働者が多い。大統領選での労働者票の獲得を狙っているのだろう。
米国には、相手国の不公正な貿易慣行の是正を目的に、一方的に関税を引き上げることができると定めた米通商法301条があり、これに基づき実施するという。
トランプ前政権も、この法律を使い、家電や鉄鋼など中国の多くの製品に関税を上乗せして、米中の貿易摩擦を激化させた。
トランプ氏は次の大統領選で当選した場合、中国からの輸入品に60%の関税を課すことを検討しているとされる。中国製に限らず、全ての輸入品に原則10%の関税をかける意向も伝えられている。
米鉄鋼業界では、日本製鉄によるUSスチールの買収計画についても論議が起きている。
バイデン氏は「完全に米国の企業であり続けるべきだ」と買収に慎重な考えを示す。トランプ氏は「私なら即座に阻止する」と、強い反対姿勢をアピールする。
USスチールは、かつて世界最大の鉄鋼メーカーだったが、競争力が低下し、22年の粗鋼生産量で27位にまで順位を下げている。
日本製鉄の先端技術を使い生産体制を強化すれば、USスチール側にも利点が大きいはずだ。政治問題化させず、経済合理性の観点から判断することが望まれる。
一方、中国側も不公正な貿易慣行を是正すべきである。国の補助金を使って鉄鋼製品を過剰生産し、安価な製品の輸出拡大を図るようでは困る。電気自動車(EV)でも、欧州などで安い中国製品への警戒感が強まっている。