人口減少に、歯止めがかからない。日本の総人口は、2100年には現在からほぼ半減するとの予測もあり、手をこまねいていれば社会の維持が困難になる恐れがある。政府や企業は対策を総動員し、結婚・出産を望む「若者」や子育てを担う「家庭」を、社会全体で支える意識を醸成しなければならない。少子化の加速を抑え、将来にわたって社会の活力を持続させるため、読売新聞社は7項目の対策を提言する。
ラストチャンス
日本の総人口は1億2435万人(総務省推計。2023年10月現在)で、08年の1億2808万人をピークに減少局面に入っている。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計では、約30年後に1億人を割り、2100年には6277万人に減るとされる。
少子化は想定を上回るスピードで進む。2023年の出生数は過去最低の75万8631人だったが、これは社人研が35年頃に至ると予測した水準で、10年以上早く進行している。
少子化に伴い、生産年齢人口(15~64歳)の割合が縮小すれば、高齢者を支える現役世代の負担が増え、社会保障制度の維持は難しくなる。公的サービスやインフラ(社会基盤)の担い手も不足し、国力の大きな減衰は免れない。
2100年は、今年生まれた赤ちゃんが76歳になる年だ。遠い将来の話ではなく、対策を先延ばしにする余裕はない。岸田首相は「2030年代に入るまでがラストチャンス」としている。00年頃は出生数が110万人を超えており、この世代が20~30歳代を迎える30年代の結婚・出産数が、人口を大きく左右する。
結婚や出産は個人の選択が尊重されるべきで、少子化の打開を若者や家庭に背負わせてはならない。若者や子育て世帯が「子どもがほしい」「2人目をもうけたい」と自然に望み、経済的要因や労働・子育て環境の不十分さによってその願いが妨げられないことが重要だ。制度や仕組みの中心に若者と家庭を据えるような意識の変革が、政府や企業には求められる。
安定財源
民間有識者らで作る「人口戦略会議」(議長=三村明夫・日本製鉄名誉会長)は1月、2100年の人口を8000万人で安定させるため、若者の所得向上や女性の就労促進を重視した対策の実施を提言した。
出産・育児で退職や昇進の遅れを強いられる現状は「出産=リスク」の印象を強めている。政府は、育児と仕事を両立できる制度を導入する企業を財政面で下支えするべきだ。
子育て世帯に第2子をためらわせないためには、長時間労働を抜本的に是正し、夫が育児に関わる時間を増やすことが欠かせない。残業の賃金割増率の大幅な引き上げは、企業がコスト抑制で残業を減らす方向に作用するはずだ。
第3子以降に対する児童手当などの優遇措置の対象を第2子に拡充することも、「2人目」を後押しする効果が期待できる。
少子化対策には安定的な財源が不可欠だ。与野党は負担の議論から逃げず、社会保険料や税を含めた財源確保策で幅広い合意を目指さなければならない。政府は、恒久的な対策本部を創設し、長期的・総合的な対策を講じるべきだ。
デジタルの活用 必須
少子化の傾向が一定程度抑制できても、長期的な人口減少は避けられない。現在より小さい人口規模でも地方や経済の活力を持続させる方策を、同時並行で検討する必要がある。
人口減に向き合いつつ既存の資源を生かすには、市町村合併や中心市街地への集住なども積極的に考えるべきだ。各地域の拠点となる地方都市には、雇用や教育環境を充実させ、大都市圏への人口流出を食い止める役割が求められる。若者を呼び込む施策も、近隣自治体との人口の「奪い合い」では意味がない。人口減を地方の問題とせず、国や都市部が地方を支える意識が必要だ。能登半島地震は、過疎地の災害では救助活動や復旧・復興に困難が伴うことを浮き彫りにした。平時から防災力を磨いておくことが大切だ。