劇作家で俳優の唐十郎さん死去 84歳 アングラ演劇で絶大な人気(2024年5月5日『NHKニュース』)

「紅(あか)テント」の公演でアンダーグラウンド演劇の旗手として絶大な人気を誇り、数多くの独創的な舞台を作り上げた、劇作家で演出家、俳優の唐十郎さんが、4日夜、都内の病院で急性硬膜下血腫のため亡くなりました。84歳でした。

唐十郎さんは東京都の出身で、明治大学文学部演劇学科に入学、在学中から俳優として活動し、卒業後「状況劇場」を旗揚げ、1967年には東京 新宿の花園神社で「紅テント」を張って公演を行うなど、アンダーグラウンド演劇の旗手として絶大な人気を誇りました。

状況劇場の解散後、1989年には劇団「唐組」を結成、唐さんは劇作家、演出家、俳優としてテント公演を精力的に行い、数々の独創的な作品の上演を続けてきました。

2003年には、長崎の諌早湾干拓問題から着想した「泥人魚」で、多数の戯曲賞や演劇賞を受賞しました。

小説家としては、1983年に「佐川君からの手紙」で芥川賞を受賞しています。

唐さんは2021年、現代演劇をはじめとする文化芸術に多大な影響を与えたとして文化功労者に選ばれています。

遺族などによりますと、唐さんは、今月1日に自宅で転倒して、都内の病院に緊急搬送され、4日夜、急性硬膜下血腫のため亡くなったということです。

84歳でした。

長男の大鶴義丹さん「芝居を愛して 芝居に愛された」

唐十郎さんの長男で俳優の大鶴義丹さんは、「私がまだ十代だったとき、いつも父は、三度の飯のように芝居をし続けたいと言っていました。最後まで芝居を愛して、芝居に愛された、最高に幸せな人生だったと思います」と、コメントしています。

妻の美和子さん「テントで行う公演でお別れを」

唐十郎さんの妻の美和子さんは「亡くなってから一日もたっていないので、葬儀の予定は未定ですが、近親者のみで行えたらと思っています。きょうはテントで行う劇団公演の初日です。戯曲のことばを聞いて、お別れしていただけるとありがたいです。それが唐十郎の本望だと思います」と話していました。

「唐組」座長代行 “分身とも言えるこのテントにいる” 

劇団「唐組」は5月5日から東京 新宿の花園神社の境内に張られた「紅テント」で代表作「泥人魚」を上演する予定です。

訃報を受け、「唐組」で唐さんの座長代行を務める久保井研さんが、その思い出を語りました。

久保井さんは「10年ほど前に転倒してからは、舞台に出演することはなくなりましたが、自身の作った芝居をここに見に来ては涙していました。きょうからの舞台も元気になった唐さんに見てもらおうと思っていましたが、それはかないませんでした。“目指す山”というよりも“はまる沼”のような演劇人で、すべてのことばが宝物のように思えますが、『とにかく観客が待ってる。何があっても芝居はうつんだ。飯を食うように芝居をやるんだ』ということばが一番印象に残ってます。唐さんは分身とも言えるこのテントにいると思います。何よりも芝居が大好きな人で、客席の後ろから見守ってくれているはずなので、きょうは初日の幕を開けます」と話していました。