グーグル処分 市場支配力で競争を阻害した(2024年4月24日『読売新聞』-「社説」)
巨大IT企業が、不当に競合相手の事業を制限していたという。一企業が市場を支配することの弊害を浮き彫りにしたと言える。公正取引委員会は監視を強めてもらいたい。
米グーグルが技術を提供しているヤフー(現・LINEヤフー)のデジタル広告配信事業を巡り、グーグルが独占禁止法に違反していた疑いがあるとして、公取委が初の行政処分を出した。
問題があったのは、インターネットで検索した語句に関連する広告を、スマートフォンなどに表示する「検索連動型広告」だ。
ヤフーは元々、米ヤフーの検索技術を利用していた。米ヤフーがグーグルとの技術開発競争で劣勢になったため、2010年にグーグルと提携し、検索関連の技術提供を受けるようになった。
グーグルは検索連動型広告の技術もヤフーに供与したが、15年9月から、スマホ向け広告配信に必要な技術の提供をやめた。ヤフーに広告収入が流れるのを阻止する狙いがあったのではないか。
グーグルは公取委の調査が入った22年に提供を再開したものの、ヤフーは約7年間も広告配信の一部で事業展開が困難になった。
優位な立場にあるグーグルが、ヤフーの事業を妨害したとすれば問題は大きい。公正な競争をゆがめる行為であることは明白だ。
グーグルとヤフーが提携した10年当時も、公取委は聞き取り調査を行った。グーグルから、技術を提供しても競争を維持する意向が示され、提携を認めた経緯がある。その約束が 反故ほご にされたことになり、不誠実極まりない。
検索連動型広告の国内市場で、グーグルは7~8割のシェア(占有率)を持つ。競合するヤフーが締め出され、グーグルの独り勝ち状態になれば、企業が出す広告の料金がつり上がりかねない。
高い広告料が商品やサービスの価格に反映されると、消費者にも不利益が及ぶことになる。
独禁法の疑いがあると指摘された事業者が、自主的に改善計画を公取委に出し、認められれば、排除措置や課徴金納付の命令のような厳しい処分を受けなくて済む。公平な競争環境を素早く取り戻す狙いで、18年に始まった。
グーグルは、ヤフーへの技術提供を制限しないことや、外部の定期監査を行うことなどを計画に明記した。その順守は当然である。その上で、グーグルは社会的責任の重さを再認識すべきだ。