法案では、現在中学生までにとどまっている児童手当緒支給を高校生年代まで延長し、所得制限も撤廃する。両親が共に育休を14日以上取った場合、育休給付を最大28日間、実質10割に引き上げる。保育サービスも拡充し、親の就労に関係なく預けられる「こども誰でも通園制度」を設ける。
今後3年間で、新たに年最大3兆6000億円の財源が必要となり、社会保障費の歳出削減や支援金などで賄う。支援金は26年度に徴収を始め、段階的に引き上げて28年度に1兆円とする。
政府が示した負担額の試算によると、28年度は会社員らの「被用者保険」では年収600万円で月1000円、年収1000万円の場合は月1650円。事業主も原則的に同額を負担する。自営業者らが加入する国民健康保険、75歳以上の後期高齢者医療制度では、年収80万円でいずれも月50円などと幅がある。
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◆少子化対策の中身より…
少子化対策関連法案を巡る衆院審議では、法案に盛り込まれた施策の中身よりも「子ども・子育て支援金」の新設による「負担増」の是非に論戦が集中した。理由は、政府が国民負担に関する丁寧な説明を避け続けたからにほかならない。
岸田政権は昨年、早々に増税はしないと明示し、公的医療保険料と合わせて徴収する支援金の制度を設計した。実際は国民に新たな支出を求めるにもかかわらず、岸田文雄首相は「実質的な追加負担を生じさせない」との答弁を繰り返してきた。徴収額に関する試算も「1人当たり月平均で500円弱」を皮切りに、小出しにしてきた。
◆「野党も実効性ある財源確保策を」
「追加負担はない」との首相の主張は、歳出改革で社会保険料負担の伸びを抑え、浮いた分の範囲内で支援金を捻出することが前提だ。高齢者人口が増加の一途をたどる中、社会保障の必要経費を圧縮することは容易でない。子育て支援策を充実させるのに、新たな負担がゼロとの説明は、ほとんどの国民は理解できないはずだ。
人口減少が続く日本。2070年には人口の3分の1を失う恐れがあるとの推計がある。論戦の舞台は参院に移るが、政府が「異次元の少子化対策」を掲げるならば、児童手当の支給拡充など新たな支援策に必要な「負担増」の内容を詳細に国民に説明し、正面から理解を求めるべきだ。支援金の在り方を批判する野党も、実効性のある財源確保策を示して、政府に建設的な議論を求める責任がある。(坂田奈央)
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