◆「実質的な負担は生じない」と繰り返す岸田首相
岸田政権は少子化対策の財源として、年額最大で3兆6000億円を見込む。内訳は、既存の予算(1兆5000億円)と社会保障の歳出改革(1兆1000億円)のほかに、2026年度から徴収予定の支援金(1兆円)だ。
支援金を巡って、岸田文雄首相は賃上げなどを念頭に「実質的な負担は生じない」と繰り返してきた。だが、こども家庭庁の試算では、年収600万円の会社員の場合に徴収額は月1000円となる見込み。これに対し、立憲民主党と日本維新の会は「負担ゼロ」を実現させるなどとして、支援金に代わる財源案をそれぞれ示した。
◆立憲民主「ETFの分配金を財源に」
立民の修正案は、日銀が大規模な金融緩和の一環として購入したETF(簿価37兆円)を政府が買い取り、その分配金を財源に充てる仕組みだ。日銀の22年度決算によると分配金は1兆1000億円で、少子化対策の1兆円分を支援金なしで賄えるとみる。
ただETF分配金を含む日銀の剰余金(利益)は、日銀法で国庫に納付される仕組みで政府の一般会計にすでに繰り入れられている。新たな財源とは言い難く、少子化対策の予算として使う場合、国債発行などその分の穴埋めが必要となる可能性が大きい。
◆維新「国会議員の定数削減を財源に」
一方、維新の案は、国会議員の定数削減や国有資産の売却を中心に財源を捻出する。歳出削減は防衛費増額の財源になっており、安定して捻出できる保証はない。
野村総研の木内登英氏は「異次元の少子化対策ならば、政策の利点を整理し、どのような負担が必要かもっと議論をすべきだ」と指摘。「解散総選挙を意識してか、与野党ともに国民負担の議論を避けたいとの狙いが透ける」と話す。
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