少子化法案審議 対策を磨く議論重ねよ(2024年4月4日『秋田魁新報』-「社説」)

 児童手当の拡充などを柱とする少子化対策関連法案が子ども政策に関する衆院特別委員会で実質審議入りした。政府は対策に今後3年間で年最大3兆6千億円の財源を必要としている。特別委では財源確保のため創設する「子ども・子育て支援金」を巡る論戦が行われた。

 岸田政権が財源について詳しい説明を棚上げしてきたこともあり、議論がなかなか前へ進まないのは残念だ。効果を上げられる少子化対策を打ち出すことが何より急がれる。国会には対策を磨き上げるための議論を重ねることを求めたい。

 岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」に取り組むと表明したのは2023年1月。12月に策定した「こども未来戦略」を法案にまとめた。財源は子ども・子育て支援金(1兆円)をはじめ、社会保障の歳出削減、既存の予算活用で捻出する。

 公的医療保険料に上乗せして徴収する支援金について、政府は2月に加入者1人当たりの平均月額を28年度は500円弱と説明していた。これには実際は払わない子どもらも含まれている。

 3月末に公表の公的医療保険別の月平均徴収額の試算では、28年度で1人当たりが350~950円。精査の結果、平均月額は450円になると明らかにしている。

 実際の徴収額は共働きかどうかや所得で異なる。試算は平均額のみで、一人一人の負担は具体的に示していない。「共働きで子ども1人」のモデルケースを示すなど工夫の余地もありそうだ。現状の説明では国民の理解を得るのは難しい。

 野党がやり玉に挙げるのは、岸田首相らが繰り返す、支援金を徴収しても「国民に実質的な負担が生じない」という主張。「まやかしで理解できない」など、野党は批判を強める。政権側が無理を重ね「国民の負担」ではないと主張し続けているようにも映る。

 医療や介護など社会保障の歳出削減に取り組むことで保険料の伸びを抑えられるという理屈らしい。しかし、高齢化が進む中、継続的な歳出削減は可能なのだろうか。政府には丁寧な説明が求められる。

 国の人口動態統計の速報値(外国人らを含む)では、23年の出生数は過去最少の75万人台。初めて80万人を割った22年から少子化が一段と進んだ。

 政府の対策は児童手当の対象拡大や増額など、子どもがいる世帯への経済支援に重点が置かれている。今後はこれから結婚や子育てという世代への支援にも目を向ける必要がある。雇用確保や賃上げなどの対策も急務となろう。

 首都圏への一極集中が進む中で、地方の将来に対する不安も結婚や子育てなどをためらわせる要因だ。国や地方自治体には地方の子育て支援を都市部以上に手厚くするなど思い切った対策の検討も必要ではないか。