国スポ見直し論 身の丈に合った運営を(2024年4月18日『山陰中央新報』-「論説」)

 今年、国民体育大会(国体)から名称変更した「国民スポーツ大会(国スポ)」の意義と今後の在り方を考えるには絶好の機会なのかもしれない。国スポの運営を巡り、持ち回りで開催する各都道府県の知事から「見直し論」が噴き出している。

 「常識的な思考ができていない。小学校からやり直した方がいい」。12日の定例会見で島根県の丸山達也知事は強い口調で非難した。矛先は国スポを共催する日本スポーツ協会と国だ。

 国体として1946年に始まった国スポは、各都道府県の持ち回りで毎年開催されている。同協会と文部科学省、開催都道府県の3者による共催。現在は2巡目で2030年に島根県、33年に鳥取県で開催し、35年から3巡目に入る。

 丸山知事がかみついたのが、都道府県の財政負担の問題を解決しないまま3巡目を計画する姿勢に対して。国スポ開催では施設整備などに多額の費用がかかり、島根県は30年大会の総事業費を235億~265億円と試算。これに対し、国の補助金は5億円程度にとどまる。2巡目の30年大会は現行通り行うとする一方、3巡目について「問題を放置したまま開催するのは容認しがたい」と強調した。

 その前日に会見した鳥取県平井伸治知事も、競技会場の整備で競技団体が求める施設の水準が高く財政負担が重くなっていることを問題視。「今のまま3巡目に入るなら廃止した方がいい」と指摘した。財政面を見れば当然の主張と言える。

 事の発端は全国知事会長を務める宮城県村井嘉浩知事の発言。8日の会見で財政負担に加え、注目度の高い競技でも有名選手があまり出場しない点も挙げ「47都道府県が順番に年に1度、ほぼ全ての競技の選手を1カ所に集めるのはやめるべきではないか」と問題提起し、「廃止も一つの考えだ」と述べた。国スポ開催について不満が高まる中、一石を投じた格好だ。

 島根、鳥取両県知事をはじめ賛同する意見が広がる中、「待った」をかけたのが、今秋の国スポ開催を控える佐賀県山口祥義知事。「国スポの廃止には反対だ。子どもたちにスポーツの素晴らしさがつながるようにしていくのも、われわれの務めだ」と開催意義を強調した。

 山陰両県でもバスケットボールB1の島根スサノオマジックにサッカーJ3のガイナーレ鳥取プロスポーツが身近になった。とはいえ、スポーツ振興の面で国スポの果たす役割はまださびていないだろう。1982年のくにびき国体を機に、会場地となった島根県奥出雲町ではホッケーの競技熱が定着。そうした好機を手放すのは惜しい。

 都道府県単独での運営が厳しいのなら、新たな手法として複数県や地区ブロックでの共同開催もあるだろう。かつて単独開催だった全国高校総体の夏季大会も、島根県が主会場になった2004年の「中国04総体」から原則地区開催に変更された。

 また「数年に1度」の開催を提案する知事もいるが、活動が3年間に限られる高校生のことを考えると現実的ではない。

 見直しを求める声を受け、日本スポーツ協会は17日、新たな検討部会を立ち上げることを明らかにした。子どもたちの活躍の場を守るため、身の丈に合った運営策を探ってほしい。