自民党裏金問題は「監査」の問題ではない? 会計士協会がわざわざ「会長声明」を出して責任逃れ(2024年4月17日『現代ビジネス』)

誰が気づくべきだったか

 自民党の派閥を巡るいわゆる「裏金」問題は、真相が明らかになったとは言えないまま、手続き上のミスということで関係者の処分だけが行われて幕引きがされようとしている。本当にミスならば、誰も気が付く人はいなかったのか。

 

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 実は、政党や政治家が代表を務める政治資金団体などには「外部監査」の制度が導入されている。では、その監査を行っていた「監査人」にはまったく責任がないのだろうか。政党はれっきとした監査法人が担当、政治資金団体は法律の定めによって公認会計士や税理士、弁護士が監査することになっている。会計のプロが報酬をもらった上で「監査」を行っているのだから、問題が起きれば本来、責任が問われるべきだ。

 例えば、上場企業である東芝粉飾決算が表面化した際には、東芝の歴代社長は罪に問われなかった一方で、監査を行っていた会計士は業務停止処分を受けている。粉飾で業務停止を受けた会計士がその後、監査の現場に戻るのは難しいので、かなり厳しい処分だったと言える。プロとしての責任が明確に問われたわけだ。

 ではこれだけ世間を騒がせている政党や政治資金団体に対する「監査」で、なぜ会計のプロの責任は問われないのか。

「あれは会計監査ではない」
 4月12日になって日本公認会計士協会が茂木哲也会長名で、「会長声明」なるものを出した。タイトルは「国会における政治改革に関する特別委員会の設置について」。国会で特別委員会が設置され、政治資金規制法の強化が議論されるタイミングで出したのは分かるとして、議論されている外部監査の拡充や徹底を求めるという会計士らしい声明にはまったくなっていない。

 声明では、「今般の自由民主党の一部の派閥における政治資金収支報告書の一連の問題は、そもそも収支記録の帳簿への記載という会計の極めて基本的な部分が行われなかったもの」だとして、会計の不備が大きな原因であることを認めているが、会計のプロとしての責任については「会計の専門家である公認会計士から見て誠に遺憾であります」と述べるに留まっている。その上で、「政治資金規正法に基づく政治資金監査は、ガバナンスをその前提とせずに会計事務に対して外形的・定型的に確認を行う業務」だとしている。

 ちょっと分かりにくいが、どういうことか。

 要は政治資金監査は本当の意味での監査ではない、と言っているのだ。ベテラン会計士の多くは「政治資金監査はあれは監査ではありません。なんちゃって監査ですよ」と異口同音に言う。収入の記載に漏れがないかチェックする義務はなく、それに付随する支出があって記載されていなくても問題にしない。提示された領収書と帳簿を付きわせるだけで、民間企業の監査なら当然行う銀行預金の残高調査も行っていないケースがほとんど。資金の流れや財産の状況を把握する「監査」とは到底呼べない代物なのだ。

 だったら、会長声明で「あれは監査ではない」「きちんとした監査を行うべきだ」と主張すれば良いように思うが、そうはしない。そもそもガバナンスが悪いのだから会計士に責任はない、と言っているのが前出の声明の読み方だ。つまり、責任逃れである。

 

「監査まがい」を放置する理由

 さらに今後特別委員会で議論される外部監査の拡充についても先手を打って責任回避をしている。声明では続けてこう述べているのだ。

 「政治資金監査の対象範囲や対象項目を拡大したとしても、ルールの逸脱を未然に防止又は発見することを可能とする各団体における内部統制やガバナンスの整備が不十分な状況では、今回のような事案を防止できるというものではないと考えます」

 つまり、監査じゃない監査まがいをいくら広げても無駄です。このままでは同じ問題が繰り返されますよ、と言っているわけだ。その上で、「組織のガバナンスを強化するための方策について議論すべきと考えます」としている。監査じゃなくてガバナンスの問題だというのだ。

 そこまで言うなら、不正をまったく防げない監査じゃない監査など我々プロの会計士は認めない、上場企業や公益財団法人などに義務付けられているフルスペックの監査導入を求めれば良いと思うのだが、会計士協会では会長といえどもそこまで言えないという。

 なぜならば、政治資金監査で報酬を得ている会員会計士がたくさんいるので、そんなことを言えば、食いっぱぐれる会員から突き上げを食うからだ、と会計士協会の関係者は明かす。

 政党監査を上場企業並みにやれば各議員のポケットになっている政党支部にも監査が及ぶから、一気に資金の流れが透明化できるはずだが、そこにも会計士協会は踏み込まない。大手の監査法人が政党監査を受注して利益を得ているからだ。会計のプロが聞いて呆れる。

 国会は遠慮なく、政党や政治資金団体に上場企業並みのフルスペックの監査導入を決めれば良い。その上で、不正を見逃した会計士を資格剥奪など厳しく処分すればよい。そうなれば、監査法人も会計士も本気になって監査を行うし、ガバナンスに不備があれば監査人として修正を求めることになる。

 しかし、残念ながら、国会議員の多くも厳しい監査に縛られるのは嫌だから、本気で本物の監査の導入などは俎上に上げないだろう。結局、外部監査の拡充だとして今のなんちゃって監査を拡大、会計士など「自称会計のプロ」たちは、ますます報酬で潤うことになる。

磯山 友幸(経済ジャーナリスト)

プレスリリース「会長声明「国会における政治改革に関する特別委員会の設置について」の発出について」

2024年04月12日Press Release
報道関係者各位

 日本公認会計士協会では、2024年4月12日付けで会長声明「国会における政治改革に関する特別委員会の設置について」を発出しましたのでお知らせいたします。

 本会長声明はこちらからご参照ください。
 https://jicpa.or.jp/specialized_field/20240412gqj.html

 

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