離婚後の「共同親権」…子どもに不利益が及びかねない「懸念」とは 民法改正案が衆院委で可決(2024年4月13日『東京新聞』)

 
 衆院法務委員会は12日、離婚後も父母双方が子の親権を持つ「共同親権」を導入する民法改正案を、与党などの賛成多数で可決した。来週に衆院を通過し、参院に送られる見通し。自民、公明、立憲民主、日本維新の会の4党の合意に基づき、親権の在り方を決める際に「父母双方の真意」を確認する措置を検討することを付則に盛り込むなどの修正をした。
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◆就学支援金の受給の可否に影響する可能性も

 離婚後の共同親権を導入する民法などの改正案は、根強い慎重論に配慮し、共同親権となるケースを事実上厳格化する修正が盛り込まれた。だが法案の核心部分は変わっておらず、一方の親だけでできる行為の範囲は曖昧なまま。父母間の紛争が増え、子に不利益が及ぶ懸念は残されている。
 「共同親権のケースで、どんな時に一方の親だけで親権を行使できるのか、明らかでない部分がある」
 12日の採決後、立憲民主党の道下大樹氏は、記者団に厳しい表情で語った。
 改正案は、共同親権の父母でも、日常の行為や「急迫の事情」があるときは、一方の親だけで親権を行使できると定める。具体例が明文化されていないせいで、対立や紛争に発展しやすいことが心配されてきた。
 法務省は審議で、日常の行為として「食事やワクチン接種、習い事の選択」を例示。「急迫」の解釈は、入試の合格発表直後の入学手続きや緊急手術など、協議や裁判をしている時間がないケースだと答弁した。
 ただ、一方の親だけで決められる医療行為の範囲は「緊急性による」と述べるにとどめ、明示しなかった。慢性疾患がある子への治療方針を決める際、協議が難航する可能性がある。
 さらに高校の授業料負担を軽減する就学支援金を巡って、文部科学省は、共同親権なら原則、父母の所得を合算して受給の可否を判定すると説明。十分な養育費を受け取れていない子が所得制限で支援から漏れるおそれが浮上した。共産党の山添拓政策委員長は12日の記者会見で「奨学金生活保護など、社会保障に影響し得る」と問題視した。
 法務省による2022年度のパブリックコメント(意見公募)には8000件超が集まり、団体からの意見は導入に賛成が多かった一方、個人からの意見では反対が賛成の2倍に上った。社会の理解が追いついているとは言い難く、参議院の審議で不安を払拭できるかが問われる。(大野暢子)