【全文】「犬と散歩する大谷翔平を見た。直接聞くぞ」と脅され…水原容疑者の起訴状36ページに書かれた内容とは(2024年4月13日『東京新聞』)

 
米ロサンゼルスの連邦地検は11日、銀行詐欺容疑で大リーグ、ドジャース大谷翔平選手(29)の元通訳、水原一平容疑者(39)を訴追したと発表した。違法賭博の借金を返済するため、大谷選手の口座から胴元側に1600万ドル(約24億5千万円)以上を不正に送金したされる。
2人の間に何があり、連邦地検はどんな犯罪事実を認定したのか。36ページにわたる起訴状を紹介する。(デジタル編集部・吉田通夫)
大谷翔平の隣で通訳する水原一平容疑者=2月3日、ドジャースタジアムで(AP)

大谷翔平の隣で通訳する水原一平容疑者=2月3日、ドジャースタジアムで(AP)


起訴状と宣誓供述書の内容は以下の通り。(一部、本紙の判断で内容をわかりやすくするために説明や見出しを加えたりしたほか、省略している部分があります)
 
起訴状
水原一平容疑者は2023年6月20日ごろ、カリフォルニア州ロサンゼルス郡その他で、銀行詐欺の違反行為を行った。
この刑事訴追は以下の事実に基づく:宣誓供述書を参照
宣誓供述書
I.目的
1.この宣誓供述書は、水原一平容疑者の、銀行詐欺を巡る起訴状と逮捕状を補完するために作成された。
2.この宣誓供述書に記載された会話および供述は、事実的および部分的であり、すべての金額または総額は概算であり、すべての日付および時刻は示された通りかその前後である。
II. 検察官の経歴(略)
3.略

◆大谷氏「送金を承知していない」

水原一平容疑者の訴追について会見するマーチン・エストラダ連邦検察官=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

水原一平容疑者の訴追について会見するマーチン・エストラダ連邦検察官=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

III. 概要
4.2021年11月から2024年1月までに、1600万ドル(約24億5千万円)が、プロ野球選手である被害者A(大谷翔平氏)の預金口座から、A銀行に移された。これらの資金は、違法なスポーツ賭博の胴元の関係者の口座に送金された。
5.大谷氏は事情聴取で、送金を承認していないと述べた。
6.大谷氏の口座からの送金は、水原容疑者に関連するデバイスおよびIPアドレスから行われた。水原容疑者は最近まで大谷氏の通訳および事実上のマネージャーとして雇用されていた。水原容疑者の携帯電話のテキストメッセージによれば、容疑者は2021年9月に胴元が運営する違法なギャンブルを始め、2021年後半には多額の損失を出し始めている。

◆大谷氏の連絡先情報が変更され…

A銀行の記録によれば、同時期に大谷氏の口座の連絡先情報が変更され、水原容疑者の電話番号および容疑者に関連する匿名の電子メールのアドレスがリンクされた。
7.A銀行が作成した大谷氏の口座に関連する電話では、水原容疑者が大谷氏だと偽り、A銀行の行員をだまして大谷氏の口座から胴元の関係者に送金を承認させようとする様子が録音されていた。
8.A銀行の記録によれば、水原容疑者は大谷氏になりすまして大谷氏の口座にアクセスし、胴元の関係者に送金した。特に、2023年6月20日には、水原容疑者は50万ドル(約7600万円)を送金した。
9.最終的に、2024年3月20日に、水原容疑者は胴元にテキストメッセージを送り、大谷氏から資金を盗んだことを認めた。
 
IV.推定理由
10.検察官は以下のことを把握している:

◆今回の胴元「ターゲットの1つ」

11.内国歳入庁と国土安全保障省の捜査官(捜査チームと総称)は、南カリフォルニアで活動する違法なスポーツ賭博組織と、ネバダ州ラスベガスのカジノを通じたこれらの事業の収益の洗浄を捜査してきた。
水原一平容疑者の訴追について記者会見するマーチン・エストラダ連邦検察官=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

水原一平容疑者の訴追について記者会見するマーチン・エストラダ連邦検察官=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

12.現在までに、これらの捜査は12人の刑事被告人と1つのマネーサービス・ビジネスの刑事訴追または有罪判決につながるとともに、2つのラスベガスのカジノとの不起訴合意に至っている。捜査は現在も継続中で、複数のターゲットがあるが、全員が互いに関連しているわけではない。そのようなターゲットの1つが今回の胴元である。
13.2023年10月3日、リッチリン判事は、胴元の住居や身辺、携帯電話の捜索を許可した。
14.押収した携帯電話から、胴元が違法な賭博ビジネスの運営を促進するために使っていた2つのウェブサイトのURLを含む大規模な違法ビジネスの運営を示す多数の通信が含まれていた。
 a~d. 略

◆水原容疑者「UCLAに賭けたけど、完敗だった!!!」

15.水原容疑者の携帯電話から、胴元に関連する電話番号との数百ページ分のテキストメッセージなどが確認された。以下のようなやりとりがあった。
 a. 2021年9月8日ごろ、胴元の関係者は水原容疑者にメッセージを送り、賭博サイトのURL、アカウント番号、パスワードを提供した。
 b. 2021年9月24日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「サッカーをいじった。ずっと試合がある笑。UCLAに賭けたけど、完敗だった!!!」
 c. 2021年9月24日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「出金と支払いはどのように行われるの?」とメッセージを送った。胴元の関係者はその日のうちに「胴元は日曜日の夜に支払いを回収している」と返信した。
 d. 2021年10月27日ごろ、胴元の関係者は水原容疑者に次のようなメッセージを送った。「胴元は私に、あなたに連絡するように言った…彼は明日までに決済したいと言っている」。水原容疑者は「私は今アナハイムに戻っているが、クレジットカードかデビットカードで胴元に支払う方法はありますか?彼の銀行口座に送金できます。どの銀行か分かりますか」

◆「遅れて申し訳ないと伝えて…」

 e. 2021年10月31日ごろ、胴元の関係者は水原容疑者にメッセージで「胴元は銀行振り込みが可能かどうか聞いてきたので、できるかどうか教えてほしい」と送った。
 f. 2021年10月31日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者にメッセージで「私の銀行がメールで、受取人の情報がもっと必要だと言ってきた。銀行は受取人の完全な住所が必要だと。その情報があれば、すぐ振り込まれる…銀行は11月1日には確実に入金されると言っている。胴元に、遅れて申し訳ないと伝えてください…私は振り込みをしたことがなくて…」と送った。
 g. 2021年11月2日ごろ、胴元の関係者は水原容疑者にメッセージで「胴元が振り込みはされたのかと聞いてきた」と送り、水原容疑者は「2日連続で送ってみたが、キャンセルされた…1回に送る金額を少なくする必要があるかもしれない…胴元に、金額を引き下げて送ってもいいか聞いてもらえませんか。1回に1万5000(ドル、約230万円)とか。迷惑を掛けてすみません」と送った。

◆「今、日本にいるのでそんなに…」

 h. 2021年11月4日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者にメッセージで「振り込みがキャンセルされ続けている…(送金アプリの)ペイパルを使う…関係者の電話番号をもらえる?口座のための番号ならなんでもいい」と送った。翌日、水原容疑者は「ペイパルが使えない。私が今、日本にいるので、そんなに多額の送金はできないそうだ」と述べた。
 i. 2021年11月6日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「振り込みができない…A銀行に口座は持っていませんか。同じ銀行なら簡単だと思う」とメッセージを送った。2日後、胴元の関係者は、A銀行の口座を教えた。
 j. 2021年11月9日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「できる限りのことはしたが、どれもうまくいかない…すごいストレスだ」と言った。
 k. 2021年11月10日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「4万(ドル、約610万円)を送ることができた。1度に4万ドルしか送れないようだ」と言った。

◆「くそ、すべて失った」

 l. 2021年11月15日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に、胴元に対して「また5万を送る。5~7営業日かかるかもしれない」と言った。
 m. 2021年12月8日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「ペイパルの関連サービスを通じて5万(ドル、約760万円)の送金を依頼した。受理されたら連絡します」と言った。
 n. 2022年1月2日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に、「口座をリロードできる?(賭け金を)すべて失った」と言った。胴元の関係者は「胴元は5万(ドル=約7600万円)をバンプした」と返信した。

バンプ 賭博の際に、賭け金を借り入れられる信用枠を拡大すること。手持ち資金がなくなった場合に、借り入れて賭けられる額が増える。

 o. 2022年1月15日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「くそ、すべて失った笑...胴元に、5万ドルをバンプできるか聞いてくれないか。」と言った。
 p. 2022年2月1日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「振り込みは明日中にできるはずだ」と言った。
 q. 2022年2月4日ごろ、水原容疑者は胴元の関係者に「送金がまたキャンセルされた…窓口に行ったので、すべて処理されるはずだ…私は今日30万(ドル、約4600万円)の振り込みをした」と言った。その日のうちに「振り込みが完了した!」と説明した。

◆「素晴らしい週末…送金したらスクリーンショットを」

 r. 2022年2月8日ごろ、胴元は水原容疑者にメッセージで「こんにちは。素晴らしい週末を過ごされたことと思います。送金はまだ受け取っていません。200(000ドル=3000万円とみられる)だけ振り込んでくれますか」と口座番号を伝えた。胴元は「送金したらスクリーンショット撮って送ってください」とも送った。
 s. 2022年3月6日ごろ、水原容疑者は胴元にメッセージで「とにかく、もう少しバンプできませんか。良ければ、私の損失は水曜日に送ります。大きな振り込みをするには1週間待たなければいけない」と伝えた。
水原一平容疑者の訴追について記者会見する検察当局の担当者ら=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

水原一平容疑者の訴追について記者会見する検察当局の担当者ら=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

◆「30万だと無茶しすぎちゃう」

 t. 2022年3月10日ごろ、水原容疑者は胴元にメッセージで「ありがとう、30万(ドル、約4600万円)ではなく10万(1500万)にできない?」と伝えた。信用枠の引き下げを求めたとみられる。胴元は「クレジットを10万に下げるということ?」と尋ね、水原容疑者は「そう、30万だと無茶をしすぎちゃう」と答えた。
 u. 2023年5月16日ごろ、水原容疑者は胴元に「いま500(000ドル=約7600万円とみられる)を送りました。1000(000ドル=1億5300万円とみられる)を試したけど、なぜかできない…明日か明後日に、もう500を送ります」とメッセージを送った。

◆胴元の賞金は水原容疑者の個人口座に

 v. 2023年6月20日ごろ、水原容疑者は胴元に「週に500(000ドル=約7600万円とみられる)しか送れないみたいです…今日500を振り込んだので、明日までにあなたの口座に着くはずです…週500でいいですか?」とメッセージを送った。
16.銀行記録と胴元の携帯電話の記録から、水原容疑者は胴元から得た賭博の賞金を個人口座に入金していた。例えば、
 a. 2022年5月ごろ、胴元は携帯電話に「インディアン・ブック」と登録している仲間と連絡をとっていた。
 b. 2022年5月18日ごろ、胴元の関係者は胴元に、「振り込みの情報を送ってください」と尋ね、胴元は「口座の名義は水原一平」だとする口座情報のスクリーンショットを送った。

◆私はまた負ける…もう送金は

 c. 2022年5月19日ごろ、胴元から水原被告に「こんにちは。47260(ドル=約723万円)の入金を確認できますか。いま賭けに負けているようですが、もっと送金してほしいですか。」とメッセージが送った。水原被告はその日のうちに「はい、受け取りました。私はまた負けるので、もう送金しなくていいです笑」と答えた。
 d. 銀行記録によると、2022年5月18日に水原容疑者の口座に47260ドルの振り込み入金があった。

◆「私の金払いを心配する必要はない!!」

17. 2022年5月以降、水原容疑者の携帯電話からのテキストメッセージは、水原容疑者が「悪い流れ」にあったことを示している。賭博業者に100万ドル(約1億5000万円)以上のツケを負ったにもかかわらず、胴元は水原容疑者の賭け金の上限を引き上げ続けた。水原容疑者の携帯電話から、次のようなやりとりを把握した。
 a. 2022年11月14日ごろ、水原容疑者は胴元にメッセージで「スポーツ賭博は苦手なんだよね笑…知っての通り、私の金払いを心配する必要はない!!」と送った。
 b. 2022年12月9日ごろ、水原容疑者は胴元にメッセージで「最後に200(000ドル=約3000万円とみられる)バンプしてくれないか。誓って、最後のお願いだ。戻ったら完済する。お願いばかりで申し訳ない…」と送った。胴元は「問題ない。メリークリスマス」と答えた。

◆「最後にもう1回だけバンプして」

 c. 2023年5月20日、胴元は水原容疑者にメッセージで「あなたが不調なのは知っている。私はバンプしてあげるのは構わないが、6月1日に少なくとも200万(ドル=約3億円)を送れるのか確認したい」と送った。
 d. 2023年6月22日ごろ、水原容疑者は胴元に「またやられた笑…最後にもう1回だけバンプしてもらえる?…これで負けたら、しばらくはこれで最後だ…」と送った。胴元はその日のうちに「オーケー。もし、毎週、最低500(000ドル=7600万円とみられる)送金することを保証できるなら、あなたの望むだけバンプしてあげる」と答えた。
 e. 2023年6月23日ごろ、水原容疑者は胴元に「最悪(笑)…休みがとれない…最後にもう1度だけバンプできない?当面は、これが最後だと約束する」とメッセージを送った。胴元は「オーケー、問題ない。やったよ」と答えた。

大谷翔平が犬と散歩しているのが見える…

 f. 2023年6月24日ごろ、水原容疑者は胴元に「困った笑…最後の、最後の、最後のバンプをできない?これで本当に…本当に最後」と送った。胴元は「(バンプを)やったよ。私も同じ問題を抱えている。一平、毎週月曜日に500(000ドル=7600万円とみられる)を支払うことを保証する限り、いくらでもしてあげよう」と答えた。
 g. 2023年11月17日ごろ、胴元は水原容疑者に「おい一平、金曜日の2時だよ。なぜ電話に出ないのか。私はニューポートビーチにいて、大谷翔平が犬と散歩しているのが見える。行って話しかけ、どうしたらあなたと連絡がつくのか聞くよ?ただちに電話してくれ」とメッセージを送った。

◆「正直に言うと、ここ数年、大損」

 h. 2023年11月19日ごろ、水原容疑者は胴元にメッセージで「正直に言うと、ここ数年、暗号資産で大損して、スポーツ(賭博)でも大打撃を受けた...聞きたいけど、清算する方法はありますか? 私はすでに、あまりにも多く負けてしまった…もちろん、それは私のせいだと分かっている」と送った。
 i. (大谷氏がドジャースの入団会見を行った翌日に当たる)2023年12月15日ごろ、胴元は水原容疑者にメッセージを送り「忙しいのは分かるが、少しは誠意を見せてくれ。今夜までに電話してくれ。どんなに遅くても、何時でも構わない」と伝えた。

◆「あなたのせいで収拾が…」

水原容疑者は「申し訳ない…失礼なことをしたかったわけではないんだ…すごくすごく忙しかったんだ…最近、すべてが大変なんだ。新しいA銀行の口座は教えてもらっていないと思う…それをもらえますか。明日、いくらか送ろうと思う」と答えた。胴元は水原容疑者にA銀行の口座情報を送信した。
 j. 2024年1月6日ごろ、胴元は水原容疑者にメッセージで「あなたのせいで、このままでは収拾がつかなくなる。今日中に連絡がなければ、私の手に負えなくなる」と送った。水原容疑者は「申し訳ない…2日前に日本から戻り、明日にはまた出発する…1月中旬には戻る。正直なところ、今は本当にもがいていて、支払いには少し時間が必要だ」と答えた。

◆野球の賭けはなし

18.胴元の組織の関係者は捜査に協力しており、2021年12月から2024年1月までの水原容疑者の賭けの履歴を提供している。
19.2021年12月から2024年1月までに把握された賭けの記録は以下の通り。
 a. 2021年12月から2024年1月までに約1万9000件を賭け、1日平均約25件の賭けがあった。1回当たり10ドル(約1500円)から16万ドル(約2400万円)で、平均約1万2800ドル(約200万円)だった。償金総額は1億4225万6769.74ドル(約217億円)、負けの総額は1億8293万5206.68ドル(約280億円)で、純残高はマイナス4067万8436.94ドル(約62億円)だった。
 b. 野球の試合の賭けはなかった。
水原一平容疑者の訴追について記者会見するマーチン・エストラダ連邦検察官ら=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

水原一平容疑者の訴追について記者会見するマーチン・エストラダ連邦検察官ら=4月11日、ロサンゼルスで(AP)

20.大谷翔平の口座の取引明細書を確認し、以下の事実を把握した。
 a. 口座は2018年3月ごろ開設された。

◆最初の送金は2021年11月

 b. 大谷氏がこの期間にプレーしていた南カリフォルニアのメジャーリーク・ベースボール(MLB)クラブ(ロサンゼルス・エンゼルス)名義の給与を預金するために使われていた。
 c. 2021年11月15日、口座から4万10ドル(約612万円)の送金取引があった。水原容疑者による最初の送金だった。
 d. 2022年2月から2023年10月にかけて、口座から少なくとも1500万ドル(約23億円)の送金があった。一部は、水原容疑者が胴元に対して送金したと述べた通信と一致している。例えば、
  i. 2021年11月15日、4万10ドル(約612万円)が送金された。この日、水原容疑者は胴元に、4万ドルの送金を開始したと伝えた。
  ii. 2023年5月16日ごろ、50万ドル(約7600万円)が送金された。この日、水原容疑者は胴元に、同額の電子送金を開始したことを伝えた。
  iii. 2023年6月20日ごろ、50万ドルが送金された。この日、水原容疑者は胴元に、同額の電子送金を開始したことを伝えた。
 e. 2023年12月15日から2024年1月8日の間に100万ドル(1億5300万円)以上を胴元に送金した。
 f. また、eBayおよびWhatnotへの送金が、2024年1月から3月までに32万5000ドル(約5000万円)以上あった。Whatnotはオンラインマーケットで、野球カードなどを購入できる。

◆水原容疑者から複数の着信

21.A銀行が作成した大谷氏の口座記録を確認した、以下のことを把握した。
 a. カードには、大谷氏が唯一の署名者として記載されている。
 b. 水原容疑者はA銀行に自分名義の口座を持っている。
 c. 2021年10月から2024年2月18日の間に、A銀行の通話記録によると、水原容疑者の携帯電話の番号から、大谷氏の口座と水原容疑者の口座に関する複数の着信があった。
開幕戦前の記者会見を終えた大谷翔平と水原一平容疑者㊧=3月16日、韓国・ソウルで(AP)

開幕戦前の記者会見を終えた大谷翔平と水原一平容疑者㊧=3月16日、韓国・ソウルで(AP)

◆同じデバイス、同じIPアドレス

 d. A銀行はログイン情報を、インターネットを通じて管理している。2018年から2021年10月27日までの間に大谷氏の口座にオンラインアクセスはなかったが、水原容疑者が胴元の賭博サイトへのアクセスを許可されてから約1カ月後の2021年10月27日、大谷氏の口座は2018年以来初めてインターネットアクセスがあった。約2週間後の2021年11月9日から15日にかけて、繰り返しアクセスがあった。
 e. アクセスする各デバイスには、A銀行が一定の識別番号を割り当てる。また、A銀行はIPアドレスも記録する。
 f. 2021年から2024年3月までの間に、A銀行は、大谷氏の口座と水原容疑者の口座の両方に数日以内にアクセスしたデバイスの識別番号を複数記録している。これらには以下の事例が含まれる。
  i. 2021年10月30日から2021年11月3日の間に、水原容疑者の口座に複数回アクセスしたデバイスが、2021年10月27日から2023年5月5日までに、大谷氏の口座にも複数回アクセスした。
  ii.2022年2月4日から2022年3月24日の間に、デバイスは大谷氏の口座にアクセスし、90万ドル(約1億3700万円)を送金した。同じIPアドレスから、2021年2月25日から2022年3月31日の間、水原容疑者の口座にもアクセスがあった。
  iii.2022年4月27日から2022年6月27日の間に、デバイスは大谷氏の口座から120万ドル(約1億8300万円)を送金した。この際のIPアドレスは、2022年4月7日から2024年2月7日の間に、水原容疑者の口座へのアクセスにも使われた。さらに、水原容疑者の賭けの記録によると、2023年10月26日に、同じIPアドレスから、合計23万3386ドル(約3500万円)の賭けが3回ほど行われた。

◆「自動車ローンの送金」とうそ

22.A銀行の電話の録音から、以下のことを把握した。
 a. 水原容疑者は2022年2月2日ごろ、A銀行に電話し、大谷氏の口座から送金しようとした。この通話中、水原容疑者は大谷氏だと偽り、自動車ローンのために送金しようとしているとうそをついた。この要求は失敗し、A銀行は大谷氏の口座のオンライン取引を凍結した。
 b. 同じ日に再び電話し、別の行員が水原容疑者と話した。水原容疑者は再び大谷氏だと偽り、大谷氏の経歴情報を伝えてセキュリティチェックの質問に答え、オンライン取引の凍結を解除した。

◆再び大谷翔平と名乗り

 c. 2022年2月4日ごろ、A銀行の行員が大谷氏の口座からの30万ドル(約4600万円)の振り込み送金を確認するため水原容疑者の携帯電話に電話し話した。水原容疑者は再び大谷翔平と名乗った。
23.A銀行の記録によると、大谷氏の口座の登録電話番号と電子メールのアドレスは、水原容疑者の電話番号と匿名のGメールのアドレスだった。水原容疑者の携帯電話を確認したところ、以下のことを把握した。
 a. 電話番号は水原容疑者の番号だった。
 b. メールアドレスは、水原容疑者のペイパルのアカウントと結びつけられたアドレスだった。
 c. 電子メールアドレスは、大谷氏のアドレスと似た形式だった。
24.2024年4月2日および3日、捜査チームは大谷氏から事情聴取し、以下のことを把握した。

◆水原容疑者と大谷氏の関係

 a. 大谷氏が水原容疑者と初めて会ったのは、大谷氏が日本でプレーしていた2013年ごろだった。
 b. 2017年末、大谷氏は南カリフォルニアMLBクラブ(ロサンゼルス・エンゼルス)でプレーするため渡米した。大谷氏は当時、英語を話せなかった。
 c. 大谷氏のMLB移籍の意向が公になると、水原容疑者は大谷氏に連絡し、米国での通訳を申し出た。
 d. 水原容疑者は渡米後、大谷氏が所属するMLBクラブに大谷氏の通訳として雇われた。
 e. 大谷氏は別途、水原容疑者を事実上のマネージャー兼アシスタントとして雇用していた。

◆口座開設は2018年

 f. 2018年ごろ、水原容疑者は大谷氏とアリゾナ州のA銀行の支店に行き、口座開設を手伝った。
 g. 大谷氏の年俸は、この口座に振り込まれた。
 h. 大谷氏は、別の収入もあったが、この口座には入金されていない。
 i. 大谷氏の関連収入は、スポーツ代理人や会計士らが管理していた。

◆資金管理は専門家に頼んだはずが

 j. 水原容疑者は、常に大谷氏と代理人らとの会合に同行し通訳していた。
 k. 大谷氏は、代理人や会計士らが、A銀行の口座を含めて管理していると思っていたと述べた。
 l. 大谷氏には国内外からさまざまな収入があったため、水原容疑者に特定の口座について問い合わせることはなく、金融関係の専門家に問い合わせるようお願いし、収入や投資の全体像を把握するようにしていた。
 m. 大谷氏は、胴元や関係者への振り込み送金を許可したことはない。
 n. 大谷氏は、A銀行の口座を含めて管理権を水原容疑者に与えたことはない。
 o. 大谷氏は、A銀行の口座に登録された電子メールのアドレスに見覚えがないと述べた。

◆開幕戦後に大谷氏に告白

 p. 大谷氏が、銀行口座に水原容疑者がアクセスしたことを初めて知ったのは、2024年3月20日ごろ、韓国・ソウルで行われたMLBの試合後だった。試合後、大谷氏の所属チーム(ロサンゼルス・ドジャース)は、経営陣によってロッカールームに集められ、水原容疑者が英語で説明した。
だれも通訳しなかったため、大谷氏はほとんど理解できなかったが、水原容疑者に問題があることは分かった。ミーティング後、大谷氏は水原容疑者に個別に尋ね、水原容疑者は個人的に話す必要があると言った。
 q. 大谷氏と水原容疑者はその日の夜、ホテルで話した。水原容疑者は大谷氏に対し、違法賭博により多額の借金があること、大谷氏の口座から送金していたことを初めて明かした。
また、水原容疑者は、大谷氏の代理人らに対し、大谷氏が水原容疑者の賭博による借金を支払うために水原容疑者に資金を貸すことに同意したと偽ったことを話した。
25.捜査チームは、大谷氏のために働く金融関係の専門家にも事情聴取した。
26.2024年3月25日ごろ、捜査チームは大谷氏の代理人と面談し、以下のことを把握した。
 a. 代理人は日本語を話せない。ロサンゼルスを拠点とするタレントやスポーツ代理業者のために働いている。

代理人は水原容疑者とやりとり

 b. 代理人は2018年ごろから大谷氏の代理人を務めている。
 c. 代理人は大谷氏の契約交渉やビジネスの交渉も担っている。
 d. 代理業者に日本語を話すスタッフはいないが、日本語の通訳を雇うことがある。
 e. 代理人は、大谷氏には水原容疑者が常に同行していたため、通訳を雇わなかった。
 f. 代理人は、大谷氏と直接話したり、定期的にテキストメッセージを交換するということはなく、水原容疑者を介していた。
 g. 代理人は、大谷氏の野球などからの収入を管理するため、金融の専門家を雇った。

◆「A銀行はプライベート」

 h. 代理人はA銀行の大谷氏の口座の存在を知っており、水原容疑者にその口座について複数回尋ねた。
水原容疑者は代理人に対し、その口座は「プライベート」で、大谷氏はその口座を見られることを望んでいないと言った。代理人大谷翔平に確認しなかったが、水原容疑者を信じない理由はないと述べた。
27.2024年3月29日ごろ、捜査チームは証人J.C.を事情聴取し、以下のことを把握した。
 a. J.C.は大谷氏の口座を管理するため代理人に雇われた簿記の専門家である。

◆知っていたがアクセスできず

 b. J.C.は大谷氏のさまざまな口座を管理し、代理人の指示に従って大谷翔平の納税に必要な資料や書類を集める。
 c. J.C.は大谷氏の口座のいくつかを熟知している。
 d. J.C.はA銀行の大谷氏の口座については知っていたが、アクセスしたことはなく、残高や取引については知らなかったと述べた。
 e. J.C.はA銀行の口座にアクセスできないことで、報告されていない利息が生じたり、内国歳入庁に報告する必要のある資金の動きがあった場合、大谷氏に納税義務が生じかねないと懸念していた。
J.C.が納税申告のためA銀行の大谷氏の口座の調査について代理人に問い合わせたところ、代理人は、水原容疑者の言葉を伝え、納税義務が生じないようにすることも理解していると述べたことを伝えた。
28.2024年4月1日ごろ、捜査チームは証人B.L.を事情聴取し、以下のことを把握した。
 a. B.L.はプロの金融アドバイザーで、大谷氏の投資と資産管理を代理人から依頼された。
 b. B.L.は大谷氏のために約5年間働いてきた。

◆金融アドバイザーも

 c. B.L.は大谷氏の日本での投資や資産は管理していない。
 d. B.L.は大谷氏の口座と投資を監督していたが、A銀行の大谷氏の口座へのアクセス権や情報が与えられたことはなかった。
 e. B.L.は大谷氏の全体的な投資を考慮するため、代理人にA銀行の大谷氏の口座の情報を求めたが、代理人は水原容疑者の言葉を伝えた。
29.2024年4月1日ごろ、捜査チームは証人K.F.を事情聴取し、以下のことを把握した。
 a. K.F.は会計士であり、代理人に依頼されて大谷氏の納税の準備と申告を行った。

◆「だれにも知られたくない」

 b. K.F.が大谷氏と会ったのは1回だけで、それ以外は代理人か水原容疑者から指示を受けていた。
 c. K.F.は大谷氏の確定申告書を作成するため、大谷翔平の日本の資産を含め、ほとんどの口座および投資に関する情報を得たが、A銀行の大谷氏の口座に関する情報はなかった。
 d. 2022年10月ごろ、K.F.は大谷氏と水原容疑者と会う予定だったが、水原容疑者だけが来た。水原容疑者は、大谷翔平は体調不良で会談に参加できなかったと述べた。
会談中、K.F.は水原容疑者にA銀行の口座について質問し、利息が生じるなどした場合は大谷翔平が誤った税務申告をする恐れがあると述べた。水原容疑者は、大谷翔平はA銀行の口座をだれにも知られないようにしたかったのであり、口座に利息はつかず、納税義務が生じるような取引もなかったと述べた。

◆偽名の荷物

30.捜査チームは、大谷翔平が現在所属するロサンゼルス・ドジャースの職員に事情徴収し、以下のことを把握した。
 a. 職員はクラブハウスで働き、チームや選手への郵便物を扱うことがある。
 b. 水原容疑者は2024年1月ごろ、職員に、郵送されてくる水原容疑者宛の偽名の荷物を受け取り、取っておくようお願いした。
 c. 水原容疑者の携帯電話には「Jay Min」という名前で電子メールやウェブサイトにアクセスした記録が残っていた。
 d. 職員が受け取った、「Jay Min」宛の荷物を調べたところ、コレクター用のケースに入っていた野球カードが入っていた。
32.水原容疑者の車内から見つかった数個のブリーフケースと箱も押収した。大谷氏を含む野球カードが入っていた。目録を作成中だが、約1000枚と推定する。
33.A銀行の大谷氏の口座を確認したところ、2024年1月から3月にかけて、eBayとWhatnotで約32万5000ドル(約5000万円)の取引があった。両サイトは野球カードの売買によく利用されており、水原容疑者が転売する意図で購入したと考えている。
打撃練習中に大谷翔平と歩く水原一平容疑者=2月12日、アリゾナ州フェニックスで(AP)

打撃練習中に大谷翔平と歩く水原一平容疑者=2月12日、アリゾナ州フェニックスで(AP)

◆大谷氏は賭博把握せず

34.水原容疑者がESPNの記者に、大谷氏が水原容疑者の賭博による借金を支払うことに同意したと語ったという報道を把握した。以下の理由により、その供述に信憑性を認めない。
 a. 日本語に堪能な特別捜査官が、2020年から2024年の間に大谷氏と水原容疑者の間で交わされた約9700ページのテキストメッセージを確認し、以下のことを把握した。
  i. スポーツ賭博についてのやりとりはなかった。
  ii. 胴元や関係者に言及したやりとりはなかった。
  iii. オッズや賭け事についての話は一切なく、大谷氏が、水原容疑者が胴元と賭博をしていることを知っていたことを示すような言及もなかった。
  
  iv. A銀行の口座を「プライベート」のままにしておくとか、代理人や金融の専門家らに開示しないようにする指示といったものはなかった。

◆合法賭博にも水原容疑者の名前

 b. 前述の通り、水原容疑者が大谷氏になりすましてA銀行の行員に複数回にわたって虚偽の説明している記録も確認した。もし大谷氏が振り込み送金に気付いて認めたとすれば、繰り返しうそをつく必要はない。
 c. 合法な賭博業者3社から水原容疑者の賭博記録を見つけたが、大谷氏の記録は見つからなかった。
 d. 前述の通り、A銀行の登録電子メールは、大谷氏の知らないアドレスに変更され、水原容疑者の携帯電話と結びついていた。
 e. A銀行の大谷氏の口座の記録によると、胴元関係者への送金は2021年11月から2024年1月にかけて行われている。水原容疑者が2年近くも胴元に対して賭博の借金をし続けている間に、大谷氏が水原容疑者の送金を繰り返し承認したという話は信用できない。
さらに、大谷氏が、水原容疑者が賭博で得た賞金を水原容疑者の銀行口座に入金することを認めながら、借金を支払うことに同意したという話も信用できない。
ミネソタ・ツインズとの試合でヒットを放った大谷翔平=4月10日、ミネソタ州ミネアポリスで(AP)

ミネソタ・ツインズとの試合でヒットを放った大谷翔平=4月10日、ミネソタ州ミネアポリスで(AP)

◆大谷氏の関与なし

35.2024年3月25日、大谷氏は、捜査機関による携帯電話の調査に同意した。日本語に堪能な特別捜査官が調べたが、大谷氏が水原容疑者による違法賭博や送金について知っていたり、関わっていたりすることを示す証拠は見つからなかった。特に、以下のことを把握した。
 a. 大谷氏が携帯電話でA銀行の自信の口座にアクセスしたという証拠はなかった。
 b. 胴元の関与した賭博サイトにアクセスした形跡はなかった。
 c. スポーツ賭博や水原容疑者の賭博での借金について書かれたメールはなかった。
 d. 大谷氏のテキストメッセージには、胴元や関係者などとのやりとりはなかった。言及したメッセージも見つからなかった。
36.水原容疑者の携帯電話の調査の一環で、暗号化されたメッセージを調べ、以下のことを把握した。

◆LAタイムズに出る記事

 a. 2024年3月17日、水原容疑者は胴元に「先ほどは電話をくれてありがとう…LAタイムズ紙に出る記事の詳細を知る方法はあると思う?」とメッセージを送った。
胴元は「やあ。あの愚か者が何を印刷して言おうとしているのか、まったく分からない。彼には何も話していない。私の弁護士は、彼に、私があなたに話した事実を伝えただけだ。あとは何も話さないし、否定も肯定もできないと言った。彼はFBIが情報源だと言っていたが、本当かどうかは分からない」と答えた。

◆「盗んだ。すべて終わりだ」

 b. 2024年3月20日ごろ、水原容疑者は胴元に「報道を見たか」とメッセージを送った。胴元は「ああ。しかし、すべてでたらめだ。あなたは彼から盗んでいないだろう。すべて偽装工作だと分かっているよ」と返したが、水原容疑者はこう答えた。「技術的に、私は彼から盗んだんだ。すべて終わりだ」
37.以上のことから、水原容疑者は銀行詐欺を行ったと信じるに足る相当な理由がある。