花の名前(2024年4月11日『福島民友新聞』-「編集日記」)

 毎年、この季節になると、自分がいかに花の名前を知らないかを思い知らされる。道で、きれいな花を見つけて、後からどんな様子だったか思い出そうとしても、名前が分からないと、頭に浮かぶのは色ぐらい。誰かに伝えようとしても、うまく説明できない

▼見頃を迎えているサクラであっても、名前を使わずに、どんな花かを分かりやすく伝えるのはかなり難しい。一方、名前さえ知っていれば、見たことがない花でも、図鑑やインターネットで確かめることが可能だ

▼誰かと同じイメージを共有できるのは、名前の最も便利な役割の一つ。「サクラの若木を見たよ。近くの木々に隠れて、日が当たらずにいた」と言えば、聞いた人はある程度似た場面を思い浮かべることができる

▼ただ、名前が付いていない動植物や現象は、数え切れないほどある。例えば、幼いきょうだいや障害のある親の身の回りの世話などを担っている子どもを指す言葉も、最近までなかった

▼ヤングケアラー。そういった状況の子どもがいないに越したことはないが、現実にいる以上、名前はあった方がいい。その子どもらが自分らしい花を咲かせるのをどう支えるか。誰かと一緒に考えるための一歩になる。