「午前4時に警官たちが入ってきた…(2024年5月1日『毎日新聞』-「余録」)

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米コロンビア大で続く、イスラエルのガザ攻撃を批判する学生の抗議デモ=ニューヨークの大学キャンパスで2024年4月29日、AP
 
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パレスチナ伝統のスカーフをかぶり、イスラエルのガザ攻撃に抗議する米コロンビア大の学生たち=ニューヨークの大学キャンパスで2024年4月29日、AP
 
 「午前4時に警官たちが入ってきた。ぼくらは階段に座り込み、腕を組み合った」。米ニューヨーク中心部にあるコロンビア大の学生、ジェームズ・クネンさんは日記に書いた。1968年4月30日未明、ベトナム戦争を背景にした抗議活動が警官隊に排除された
▲ボート競技に夢中だった19歳が大学の軍事研究協力などに怒り、運動に加わって挫折も味わう。その過程を描いた日記が出版されて反響を呼び、映画化もされた。題名は「いちご白書」
▲「日本では後になって売れた」。40年の節目にクネンさんから聞いた。75年にフォークグループ「バンバン」がヒットさせた「『いちご白書』をもう一度」の影響だろう。日本の学生運動と重ねたユーミンの名曲である
▲米メディアが56年前と比較している。全米各地の大学に広がるイスラエル軍のガザ攻撃に対する抗議行動。コロンビア大で学生らが警官隊に一斉逮捕され、かえって火がついたという
ベトナム戦争のテレビ映像に耐えられなかったベビーブーマー世代と、スマホに瞬時に転送されるSNS映像でパレスチナ人の苦境に接したZ世代。68年を体験した米紙の記者は「いちご白書」を引用して類似性を指摘した
▲68年夏のシカゴ民主党大会。抗議に集まった学生らが警官隊に鎮圧された「流血の日」で大統領選への勢いはしぼんだ。そんな状況の再現を喜ぶのはトランプ氏か。にわかに浮上したイスラエルの恒久停戦提案。バイデン政権が実現を後押しするのは必然かもしれない。