「白い石炭」(2024年4月11日『福島民報』-「あぶくま抄」)

「白い石炭」東北電力

 「白い石炭」。発電地帯でそう呼ばれる。山々を覆い、北国の暮らしを閉ざす雪。春に解けだし、ダムへ流れ込む。放出される怒濤[どとう]は水車を回す

東北電力水力発電量の6割は県内産だ。このうち3割が、只見川沿いから送られている。奥会津地方は、エネルギーの古里として、日本の戦後復興と高度経済成長を支えてきた。緑の山並みを背景に、悠々と水をたたえるダムは数々の独特の景観を生み出す。JR只見線とともに、観光振興の一翼を担う

風光明媚な山間を行く。「只見線」

▼今年は水源に、ちょっとした異変が起きている。少雪によって雪解け水が1割減り、発電量が少なくなるという。ロシアのウクライナ侵攻で燃料価格が高騰し、火力発電は先行き不透明な状況が続く。「元祖再エネ」の水力発電には、地球温暖化の受難が降りかかる。物価高は収まる気配を見せない。電気代はそのままでと、祈るしかない

▼東北6県と新潟県水力発電施設を制御する運用センターが、会津若松市で稼働している。無駄のない発電を―と、日々変化する水量を調節する。この春、地産地消のクリーンエネルギーの蛇口は細くなりそうだ。「白い石炭」を一滴も無駄にせぬよう、家庭も肝に銘じて。

東北電力