米中間の溝は深いとはいえ、意思疎通の重要性を確認したことは評価できよう。対話を続けて衝突を回避し、国際社会を少しでも安定させることが両大国に課せられた責務だ。
習氏は会談の冒頭、米中関係について、「対話を強化し、意見の相違をコントロールすることは両国民の願いであり、国際社会も期待している」と述べた。
ブリンケン氏は「米中間の誤解を避け、相違点に対処するため、意思疎通の窓口を維持し、強化することに取り組む」と応じた。
中国は、感染症を完全に抑え込もうとした「ゼロコロナ」政策や不動産不況の影響で、成長の鈍化が指摘されている。習氏がブリンケン氏との対話に臨んだのは、対米関係をこれ以上悪化させたくないという判断からではないか。
もっとも、両国間の懸案が解決へと前進したわけではない。
中国が「責任ある大国」を自任するなら、ロシアに即時停戦と占領地からの撤退を求めていくのが筋だ。ロシアに寄り添い続けているようでは、中国の国際社会での信頼は損なわれるだろう。
王氏は会談で、台湾情勢について「米中関係の越えてはならないレッドラインだ」と述べ、台湾問題への米国の関与を認めないという従来の主張を繰り返した。
南シナ海を巡っては、中国とフィリピンが領有権を争い、中国海警船がフィリピン船に放水を繰り返すなど緊張が高まっている。
これについて懸念を示したブリンケン氏に対し、王氏は「排他的な小グループを放棄することを望む」と反発した。日米比が安全保障面で連携を強化しようとしていることを 牽制けんせい したようだ。
だが、3か国の協力が進んでいるのは、中国が、南シナ海のほぼ全域の権益を根拠もなしに主張し、威圧的な行動に出ていることが最大の要因だ。中国が米中関係の安定を望むのなら、覇権的な行動を改めることが先決だろう。